解熱鎮痛成分「アセトアミノフェン」で発疹、厚労省「重大な副作用」追記を指示
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薬物過敏症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome;DIHS)は、重篤な薬疹のひとつで、斑丘疹状の発疹、長引く臨床症状、高熱、肝機能障害、リンパ節腫大などを起こします。海外ではDRESS(drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms)と呼称されることがあります。
特徴的な皮疹としては、顔面の強い浮腫と口周囲の皮疹があり、致死率は10~20%と低くありません。
薬剤中止後も症状が長引くことが診断基準に含まれます。
他の薬疹との違いとして、原因薬剤の内服期間が1ヶ月以上であることが多く、抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトインなど)、アロプリノールなどが多い原因です。
そのため、(詳しい情報はこの記事からはわかりませんが)一般的には短期間の使用であるアセトアミノフェンは多い原因ではないと思われます。
2週間以上継続して内服をするような、特殊な状況だった、もしくは他の薬剤で発症したのではないかと推察します。ただし、ある薬剤でDIHSを発症した場合、他の薬剤で悪化することがあります。ですので、他の薬剤で発症したあと、アセトアミノフェンで増悪したのかもしれません。
ヒトヘルペスウイルス(ヒトヘルペスウイルス6型[HHV6]が多い)の再活性化を伴うケースが多いとされます。ただし、HHV6に対する抗体検査が最近、一般的に使用される検査会社では提出できなくなりました。今後、診断の正確性は厳しくなってくる可能性があります。
https://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/006141502
なお、最近、日本からの研究グループから、アトピー性皮膚炎の重症度の指標として使われる血清TARC値が他の薬疹との鑑別に有用との報告があります。確定診断にはなりませんが、参考になるでしょう(ただし、TARCはDIHSへの保険適用はありません)。残念ながらどのようにしても医薬品の副作用は避けられず、一定の頻度で発生します。したがって多く使われれば副作用の発生数は増加し、その医薬品では未知だった副作用もみられるようになります。軽症・中等症の副作用は頻度で管理されますが、重大な副作用(重症・重篤・死亡を伴う副作用や後遺症を伴う副作用)は「発生する可能性があること」によっても注意喚起されます。
総合的に見て投薬のメリットがデメリットを上回る場合は有用と判断され、それが否定されれば医薬品としての認可がされない、または認可が取り消されます。今回のアセトアミノフェンの重大な副作用追記は、アセトアミノフェンにおける既存の使用基準に影響を与えるレベルの注意喚起ではありません。
これまで、アセトアミノフェンの重大な副作用として、以下の各項目が知られています。重大な副作用の多くは免疫反応と関係しています。
・ショック(アナフィラキシー)、アナフィラキシー様症状
・皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群):高熱を伴って、発疹・発赤、火傷様の水ぶくれ等の激しい症状が、全身の皮膚、口や目の粘膜にあらわれる。
・中毒性表皮壊死症(ライエル症候群):高熱を伴って、発疹・発赤、火傷様の水ぶくれ等の激しい症状が、全身の皮膚、口や目の粘膜にあらわれる。
・肝機能障害:全身のだるさ、黄疸(皮ふや白目が黄色くなる)等があらわれる。
・間質性肺炎:空せき(たんを伴わないせき)を伴い、息切れ、呼吸困難、発熱等の症状。
・アスピリン喘息
・腎障害:尿量が減り、全身のむくみ及びこれらに伴って息苦しさ、だるさ、悪心・嘔吐、血尿・蛋白尿等の症状。
・無菌性髄膜炎:首すじのつっぱりを伴った激しい頭痛、発熱、悪心・嘔吐等の症状。
・偽アルドステロン症:尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が高くなる、頭痛等の症状。
今回副作用症例のデータ蓄積により、薬剤との因果関係が否定できないものとして「薬剤性過敏症症候群」が追記指示がありました。薬剤性過敏症症候群とは重症の薬疹であり、高熱をともなって、全身に赤い斑点がみられ、さらに全身のリンパ 節(首、わきの下、股の付け根など)がはれたり、肝機能障害 など、血液検査値の異常がみられたりします。薬剤性過敏症症候群に関与する因子は、過去のウイルス感染、特定のHLA型(白血球の血液型)、副腎皮質ステロイドの投与歴、高齢のようです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/3/102_738/_pdf
発症頻度は低いとは思いますが、気になる方は、医師、薬剤師の指導を仰いでください。