2022/11/23

【ドキュメント】サントリーの競争優位は「思想」だった

NewsPicks 編集長
サントリーは、不思議な会社だ。
ウイスキーやビール、清涼飲料をコアビジネスに据えながら、その他の企業活動がとにかく幅広い。
クラシックコンサートを開催するサントリーホールや国宝、重要文化財などを所蔵するサントリー美術館。バレーボールやラグビーといったスポーツにも力を入れている。
あまり知られていないが、100年以上も前から社会福祉活動(現在は老人ホーム)を、50年ほど前から野鳥を保護する愛鳥活動を続けている。
一覧にすると、営利企業としては無駄が多いように映るかもしれないが、創業精神という一本の線でつなぐと、こうした事業の意味が理解できる。
なぜサントリーは、利益に直接つながらない事業を持ち続けるのか。
その裏側には、創業者の思想と、オーナー経営の神髄があった。
INDEX
  • サントリーを生んだ「2つの物語」
  • 知られざる「キーパーソン」
  • ビジネスと信仰心
  • 利益三分主義という「競争優位」
  • 「創業家経営」の弱点

サントリーを生んだ「2つの物語」

かつて天下の台所と呼ばれた、大阪。市内を南北につなぐ大通りには、いくつかの大きな橋がかかっている。
町中に川や水路が張り巡らされ、江戸時代には、水運で日本中からさまざまな商品が集まってきた。それを全国へ送り出す中継地点として栄えてきた。
そんな大阪のとある橋で、100年前に起きた出来事が、いまのサントリーにつながっていると言うと、やや大げさだろうか。
大阪市の天神橋。ここがエピソードの場所(提供:MeijiShowa/Gettyimages)