2022/11/10

【巨大産業】天気で稼ぎまくる、超優良企業「ウェザーニューズ」

NewsPicks Buisiness Growth Division
NewsPicks編集部による番組『デューデリだん!』は、NewsPicksの記者たちが、注目の成長企業を取材し、経営トップにインタビューするまでの「過程を覗き見」できる企画。
今回、取り上げる企業はウェザーニューズ。誰もが無料で見る「天気予報」をビジネスとして年間約200億円の売り上げを誇る。実は世界でも最大規模の気象企業だ。
彼らはいったいどうやって稼いでいるのか? 代表取締役の草開千仁氏に疑問をぶつけ、天気で稼ぐビジネスモデルの謎に迫る。
INDEX
  • 予測精度は「気象庁超え」
  • 数多の市場が「天気」に左右される
  • ユーザーではなく「サポーター」
  • 超優良企業の次なる一手は
  • 次期社長候補は「千葉のジョブズ」
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予測精度は「気象庁超え」

歴史を遡ると、30年前までは法規制によって、国内の「天気予報」は気象庁にしか許されていなかった。
しかし、1993年、気象業務法の大幅改正で、民間の気象会社が独自に天気予報を発表できるようになる。
現在ではさまざまな気象会社が存在するが、主要となる気象アプリ「Yahoo!天気」、「tenki.jp」、「ウェザーニュース」の3つを比較してみよう。
まずYahoo!天気は、ダウンロード数で群を抜いているが有料プランがない。一方で、ウェザーニュースや日本気象協会の運営するtenki.jpは有料プランを採用している。
大きな違いは、Yahoo!天気は他社から提供されたデータを利用しているのに対し、ウェザーニュースとtenki.jpは自社で気象データを取得、分析していること。
さらにウェザーニュースが突出している点は、約90%という予報精度にある。これは、気象庁の80%を上回る数字だ。
これほど高精度な予報を可能にする秘密は、その観測網の規模にある。
気象庁は、地域気象観測システム「アメダス(AMeDAS)」を全国約1300カ所に設置し、気象データを取得している。一方でウェザーニュースは気象庁の10倍となる全国約13000カ所の観測拠点を持ち、加えて小型衛星を2機、打ち上げている。
こうした観測網の配備により、ウェザーニュースは広範囲の予想が可能な上に、狭いエリアにフォーカスした予報精度も高い。1時間以内であれば5分ごとの天気予報も可能にしている。
とはいえ、これだけの機能も精度も、アプリで無料提供されている。いったいどこで収益化しているのか。おなじみ藤村聖子さんと、NewsPicks編集部の畑仁記者、谷口記者で調べを進めていく。

数多の市場が「天気」に左右される

ウェザーニューズの提供する天気予報サービス「ウェザーニュース」。1カ月に1回以上使用するユーザー数(MAU)は4500万人にのぼり、年間の売り上げは約200億円を誇る。
14年連続で過去最高の売上高を更新し、業績は絶好調だ。
天気予報は一般的に無料で見られるものというイメージが強いが、実はウェザーニュースには有料会員プランが存在し、課金するユーザーは過去3年間で3倍に増加しているという。
成長の秘訣は、こうしたアプリやWEBでの個人向け(BtoC)サービスだけではない。企業向け(BtoB)サービスも広く展開しているのだ。
まず、国内のテレビ局やケーブルテレビ局など約100局に対し、気象番組の支援サービスを提供している。
メディアのみならず、鉄道や航空、海運といった物流企業に加え、メーカー、コンビニ、農業、スポーツなど、気象情報の提供先は45市場、約2600社におよぶ。
さらには、高精度な気象情報をもとに、各市場や企業に応じて適したビジネスを提案するコンサルティングサービスまで行っている。
こうしてみると、気象に左右される市場やサービスがあまりに多いことがわかる。
このような、市場や業界にとって必要不可欠となる特性を活かしたビジネスモデルは、高速道路の料金所になぞらえて「トールゲート型」と呼ばれる。
高速道路を利用する車は必ず料金所を通らなければならない。つまり、「誰もが使う」ことになる。ウェザーニューズはその特性を活かし、気象情報という武器をフル活用してビジネス展開している。

ユーザーではなく「サポーター」

ウェザーニューズのもうひとつの強みは、ファンコミュニティを形成していることだ。
例えば、ユーザーは各地の様子を撮影してウェザーニューズに送ることができる。ウェザーニューズ側は、それらの写真を全国各地の様子を報じる際に活用する。
つまり、ユーザーも天気予報を「つくる」側として参加できるのだ。こうした仕組みを構築していることから、ウェザーニューズはユーザーを「サポーター」と呼ぶ。
さらに、ウェザーニューズはチャンネル登録者数80万人以上のYouTube番組「ウェザーニュースLiVE」をほぼ24時間365日にわたり配信している。
常時配信という特徴もさることながら、根強い人気を支えているのは動画に登場する「お天気キャスター」の存在だ。
天気予報や気象にまつわるニュースを伝えるのはもちろんだが、先述したユーザー参加型の特徴を活かし、ユーザーが送信した各地のレポートをお天気キャスターが読んでくれたりもするという。
さらには、エッセイや写真集も発売しており、その存在はもはやアイドル化している。
アプリ自体の仕組みに加え、キャスターの人気を活かしたファンコミュニティが形成されているのだ。
気象企業として成長を加速させる中で、こうしたアイドルキャスターの存在はどのように位置付けられているのだろうか。

超優良企業の次なる一手は

圧倒的な規模と精度で事業の裾野を広げてきた結果、ウェザーニューズは14年連続で売り上げを伸ばしてきた。2023年5月期もさらなる伸長を見込んでおり、15年連続の増収は間違いないとみられる。
現在の収益軸はアプリとWEBによるサブスクリプション(月額課金)だ。過去3年で25億円以上を増やし、2022年は70億円近くにまで伸びている。
ただ一方で、成長率で見ると、直近では2020年をピークとして徐々に鈍化していることがわかる。
2年前と比べて約半分の水準だ。今期末、その趨勢はさらに落ち込むと予想される。
こうした状況下にあって、2022年6月、ウェザーニューズは「気候テック事業部」を立ち上げた。
気候変動対策に世界中が取り組む中、自然災害や気温上昇などが、企業のビジネスにどのような影響を与え得るのか、そのリスクマネジメントをしようというもの。
しかし、実際にどのような取り組みをするのか、その具体性はまだ見えていない。
また、海外展開も予定しているという。気象予報ビジネスは、世界でどれほどの可能性を秘めているのだろうか。今回の社長インタビューでも大きな焦点となる。

次期社長候補は「千葉のジョブズ」

成長軌道を歩むウェザーニューズだが、調べを進めると後継者問題が浮かび上がってくる。創業者の石橋博良氏の息子であり、現・取締役専務執行役員の石橋知博氏だ。
「千葉のジョブズ」と自称する彼は、ウェザーニューズ公式YouTubeチャンネルの番組などで、企業役員らしからぬ振る舞いが目立つ。
現在、同社における主要株主の内訳を見ると、約14%を石橋家で保持している状態だ。
重役を担う彼は次期社長候補とも見られるが、石橋知博氏はどの程度の株式を有しており、どのような力関係が成立しているのか。
入念なリサーチを経て、ついに社長インタビューへと臨む。
果たして、14年連続増収の理由とは。これから新たに開拓を狙う市場はどこにあるのか。なぜ「天気」の有料ビジネスが成立するのか。そして後継者問題をどのように考えているのか──。
「聞きづらい......」と顔をしかめる藤村さんだが、インタビューでは、2代目として企業を牽引してきた現社長・草開氏に率直な疑問をぶつける。
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