エジプト スエズ運河 来年1月から通航料を最大15%値上げへ
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10年ほど前,パナマ運河通航料からの移転の,パナマへの財政収入に対する比率を調べたら6-7%だったことがあります.エジプトでも一定の割合があると予想されます(詳細は確認してません).しかも徴収するのは外国の会社ですので,収入を得やすい財源として狙い撃ちされやすい構造があります.運河庁はしばしば十分な告知なしに値上げをするため,海運会社や業界団体からしょっちゅう抗議を受けています.
海運会社からすれば,通航料は大きなコストです.コンテナ船の運航コストのうち,スエズ運河やパナマ運河の通航料は大きな割合をしめます.アジア・欧州航路では約10%です.
(たとえば,以下の論文の8ページなどを参照
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tpsr/19/1/19_TPSR_19R_01/_pdf/-char/ja)
船種別支払額がわかる中で最新の2018年では,日本の海運会社はスエズ運河のコンテナ船通航料に一回の通航当たり約52万ドル,パナマ運河の通航料に約53万ドル支払っています.
(数字は,日本の海運会社が運河の通航に支払った金額は,日本船主協会が毎年9月ごろに発表しているものです
https://www.jsanet.or.jp/pressrelease/2021/index.html)
一方で,世界の商品価格に対する輸送コストは決して大きなものではありません.運河通航料の値上げが物価に与える影響は軽微なものにとどまるでしょう.
また,これまでもスエズ運河とパナマ運河は頻繁に値上げを繰り返してきたにもかかわらず,2010年代はコンテナ運賃はほぼ下がり続けました.この状況を踏まえると,そもそも運河通航料の値上げが輸送運賃に反映されるかも怪しいです.
今はコンテナの運賃水準が高いため,運河通航料が上がっても短期的には持ちこたえられるかもしれません.ただ,現在スポット運賃は急落していますし,今後運河通航料が海運会社にとってコストとして厳しい水準になることは否定できないです.
#余談ですが,パナマ運河庁,スエズ運河庁ともにパナマやエジプトでは留学経験者を多く抱えるエリート集団です.彼らは通航料の影響をしっかり分析し,喜望峰周り(や相手となる運河)を選ぶよりは(海運会社にとって)得な水準を計算してオファーしています.エジプトは世界最大の小麦輸入国ですが、通貨エジプト・ポンドはドルに対し下落を続けています。
対外債務は1600億ドルを超えました。
2022年の返済対外債務の返済額は、200億ドルになっています。
エジプトの2022年の国家予算の歳出は、1110億ドルです。
その内、燃料補助金に30億ドル、食料補助金に60億ドルはかかっています。補助金額は、もっと増える可能性が高いです。
エジプトは、何としても外貨収入を増やしたいでしょう。しかし、石油、天然ガスなどの資源と観光(過去2年間、低調でした)以外だと、スエズ運河の通行料が主な外貨収入なので、これを値上げするしかないでしょう。
民間企業は、ほとんどの分野で軍の天下り先のようになっていて、軍直営のところも多く、スタートアップとかが成長する余地はありません。少し大きくなったところで、経営権を軍に取られます。輸出産業は成長しません。世界のコストアップには、本件はきわめてわずかな影響しかないと思う。
下記を見ると、通行料収入は年間50-60億ドルとのこと。それに対して海運業界は2020年で約5000億ドル、足元はコンテナ船の運賃が多少落ち着いたといえど上がっているからもっと大きいと思う。さらに原油価格が上がっているから、そっちのほうがはるかにコストアップ要因として大きい。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/03/d848cd08a08ef0ca.html