2022/8/30

【教養】なぜ、日本は「新宗教だらけ」なのか

NewsPicks 編集部
日本は、世界でも新宗教が力を持つ「新宗教大国」である──。
7月の安倍晋三元首相の銃撃をきっかけに、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)をめぐる問題が注目を集めているが、日本の近代史を遡れば、19世紀から日本の社会、そして政治にも「新宗教」が何度も顔を出してきた。
明治維新ごろから新宗教が台頭すると、大正からは政治情勢にも大きな影響を与える「世直し系」の教派が頭角を現し、そして戦前戦後は「神々のラッシュアワー」とも呼ばれ、日本でも創価学会を始め、今も大きな教勢を誇る教団たちが登場した。
しかし、こうした日本の新宗教の流れの中でも、1970年代にかけて頭角を現した統一教会は「異質な性格」を持つ、と東京大学の島薗進・名誉教授は指摘する。
では、日本の新宗教史における統一教会とは何なのか。そもそも、日本の政治・社会はいかに新宗教と交わってきたのか。
NewsPicksでは、『新宗教を問う─近代日本人と救いの信仰』の著書もある島薗氏への取材を通し、日本と新宗教の歴史を振り返るとともに、カルト視される統一教会が浮き彫りにした政治と宗教の構造問題について解説していく。
INDEX
  • ①明治〜昭和。新宗教の勃興
  • ②創価学会と「神々のラッシュアワー」
  • ③統一教会の「現世否定」とは
  • ④「宗教」を利用する、世界の指導者たち

①明治〜昭和。新宗教の勃興

では、まず「新宗教」とは何なのか。
明治時代以降、仏教、神道、そして外来ではあるものの長い歴史を持つキリスト教などが伝統宗教とみなされる中で、これらの枠組みに当てはまらない宗教群が「新宗教」と呼ばれるようになる。
「日本では伝統宗教と新宗教が、かなりはっきり線引きされている」と島薗教授は指摘する。
「伝統的な教会の影響力が強く、新宗教が勢力を張る基盤がなかったヨーロッパ大陸に比べ、日本やアメリカは新宗教が発展しやすく、旧統一教会もその流れに乗って拡大した」(島薗氏)
これらの新宗教は、19世紀初頭から現代にかけて「4つの時期」を経て、日本社会に浸透していく。