2022/7/7

【Q&A】メンタルヘルスの素朴なギモンにドクターが答えます

メンタルヘルスは、とても身近でありながら、誤解や偏見が多く残る領域だ。専門の医療機関も、あまり身近な存在とは言えないだろう。
そこでNewsPicks編集部は、プロピッカーの米マウントサイナイ医科大学精神科の松木隆志助教授に、メンタルヘルスに関する素朴な疑問をぶつけてみた。
「薬漬け」問題から、日本における精神疾患の治療の課題、そしてGAFAMのメンタルヘルス対策まで、率直に語ってくれた。
6つのギモン
  • うつ、適応障害、バーンアウトの違いは?
  • うつ病の治療は「薬づけになる」になるの?
  • なぜ、長期間薬を飲み続ける人が多いの?
  • コロナ禍から日常を取り戻す中で、落ち込むようになりました。なぜ?
  • メンタルは鍛えられる?
  • 米国企業のメンタルヘルスに関する考え方は?

うつ、適応障害、バーンアウトの違いは?

適応障害とは、ある特定の状況や出来事が精神的な苦痛を生み、不安感や落ち込みなどの気分の変調や、会社に行けない、非常に攻撃的になるなどの行動の異常として表れます
ある状況・場面に心と体がついていけない、適応できないということで症状が出ているということです。
うつ病との一番の違いは、適応障害はストレスとなる出来事や状況が非常にはっきりしていることです。そのストレスの原因から離れると、症状が比較的速やかに改善します。
例えば、上司からパワハラを受けている場合、その上司から離れたらすぐに症状が改善するならば、それは適応障害です。
長時間労働や過労で気分が落ち込んだり、やる気が出なかったりする時、仕事の量を減らしたり、バケーションに行ったりすることですぐに改善するならば、適応障害の可能性が高いです。
もう一つ、最近よく耳にする言葉に「バーンアウト」があります。
バーンアウトは、いわゆるうつ症状の中でも、集中力がなくなる、あらゆることへの興味を失うなど、エネルギーがなくなってしまう状態の総称です。現象を指している言葉で、病名ではありません
バーンアウトの中には、適応障害やうつ病の場合もあれば、アルコールや薬物の影響、過去のトラウマなどが原因になっていることもあります。体の病気が隠れていることもあれば、双極性障害や統合失調症などの希な精神疾患が潜んでいることもあるでしょう。
メンタルヘルスの問題は「症状=病名」ではありません。これが難しいところで、うつ症状が出ていたらうつ病だというわけではありません。
私たち精神科医が診断する時は、生物学的要因、心理的要因、社会的要因の3つの面から見ていきます。
症状=病名とはしないので、よほど特徴的な症状や行動が出ていない限り、1度の診察で病名を判断するのは困難で、患者さんの様子を見ながら病名を探っていきます。

うつ病の治療は「薬づけになる」になるの?