(ブルームバーグ): NTTは9日、グループの海外事業を統合すると発表した。同社の海外通信事業を担うNTTリミテッドを上場子会社のNTTデータに移管する。NTTデータとの連携強化とグループの1株利益(EPS)水準の向上を図るため、1000億円もしくは6000万株を上限にNTTデータ株を取得する予定だ。

発表資料によると、NTTの中間持ち株会社とNTTリミテッドの海外事業をNTTデータに集約。NTTが得意とするデータセンターやネットワークサービスと、NTTデータのコンサルティング、アプリケーション開発サービスを統合することで、グループ一体の海外事業運営を進めるという。

今回のグループ再編は6月17日開催予定の中間持ち株会社の株主総会の決議を経た上で、10月1日の実施を予定している。この吸収分割による再編を受け、NTTは中間持ち株会社株式260株をNTTデータに譲渡し、対価としてNTTデータから1120億円を受け取る予定だ。

     NTTデータの本間洋社長は会見で、再編の意義について「戦略的投資とМ&A(合併・買収)ができるようになる」と述べ、メリットとしてコスト削減も挙げた。今後の投資先候補としては「クラウドやコネクティビティーの分野は非常に重要」との認識も示した。

NTTの澤田純社長は、グループとしての「海外プレゼンスは弱い。ブランドのアウェアネス(認知度)を上げていきたい」と語った。両社長の説明によると、今回の再編は昨年4月に議論を開始。同9月にNTTデータ側が提案書を示し、その後第三者機関も交えて検討してきたという。

9日の日本株市場では、両社による会見実施のニュースが伝わったことを受け、NTTデータ株は一時前日比17%高と急騰。しかし、発表を受けた午後の取引では一時マイナス圏に転じるなど失速した。

     東洋証券の大塚竜太ストラテジストは「記者会見の予定を受けてNTTによるNTTデータの株式公開買い付け(TOB)の思惑が市場で高まったが、結果的にそうならなかった」と指摘。株価の動きを見る限り、投資家は今回の海外事業に関する内容を好感しておらず、「思惑が外れた投機筋の売りが下値を叩いた」と話した。

NTTデータは中国やシンガポール、オーストラリアなどアジア太平洋地域のほか、北米や欧州などで情報技術(IT)関連業務を海外展開している。2021年3月期の北米と欧州、中南米での売上高は約9000億円。持ち株会社NTTの同期の海外売上高は186億ドル(2兆4000億円)だった。

ブルームバーグのデータによると、NTTはNTTデータ株を現在約54%保有しており、残りは金融機関などの機関投資家と個人投資家が出資している。

(両社社長や市場関係者のコメントを追記します)

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