2022/5/5

【実録】たった一人の「熱狂」が、2000人の仲間を生むまで

気候対策と聞くと、まだ何か「犠牲」を伴うものと考えられがちだ。
しかし、このポッドキャストを聞けば、そのポジティブなバイブスに心を揺さぶられるかもしれない。
My Climate Journey(MCJ、僕たちの気候の旅)。気候変動をめぐり、キーパーソンたちの人生に迫るインタビューシリーズだ。話し方は穏やかで英語の勉強にもいい。
この番組のホストであるジェイソン・ジェイコブスは、かつてランニングアプリの「Runkeeper」を起業し、日本のアシックスに売却後、燃え尽き期間を経て、2019年に一人で気候変動のポッドキャストを収録し始めた
この静かな「一人旅」は、思いがけぬ現象を生み出す。
今や200回を超える番組を通じて、コラボや協力を申し出る人々があふれ、まずリスナーたちが自然発生的に協力し合う「草の根組織」へと発展したのだ。今や有料会員制のコミュニティとして、2000人を超えるcollective(集合体)となっている
2020年には、VC部門の「Capital」にも乗り出した。
これはコミュニティの集合知を生かして、台頭する「気候テック」の有望株に資金を投入するもので、MCJは新たな成長領域の主要プレーヤーとして認識されている。
意図的に計画したものではないからこそ、仲間が集まった──。
NewsPicksは、そう話すジェイソン本人へと直撃し、その一人旅の始まりから、仲間たちとの「次なる旅路」の向かう先について、聞いた。
INDEX
  • ①成功、挫折、そしてゼロからの出発
  • ②2000人の「コミュニティ」が育つまで
  • ③シリコンバレーの先を行った
  • ④「馬鹿げたこと」も試せばいい
  • ⑤犠牲じゃない、より豊かになる

①成功、挫折、そしてゼロからの出発

──MCJのポッドキャストいつも楽しんでいます。まず、MCJにたどり着く前の旅路を教えてください。
もともと僕は大学時代にリベラルアーツを学んでいました。
ただ、どれもビジネスにつながるわけではなかったので、社会に出たら人生の全盛期は過ぎ去るのではないかと不安でした。仕事なんて楽しくないのではと。
そんな時に出会ったのがテクノロジーのスタートアップです。1990年代後半で、ちょうど最後の波が勢いを増していた時期でした。
そこからずっと、このテック業界で働いています。
テックのスタートアップは、スピード感があり、素晴らしい才能がいて、チームのダイナミズムもある。
まるで「ビジネスはスポーツみたいだ」と気づかされました。