2022/4/12

【分析】「極右」ルペンは、いかにして仏国民の心を掴んだか

INDEX
  • 大統領選のターニングポイント
  • 2つのキャラクターを行き来
  • フランスの「団結」を訴える
  • 有権者の共感を呼ぶストーリー
  • 人気の政治家第2位に浮上
  • もはや「悪者」でなはい

大統領選のターニングポイント

フランス大統領選のターニングポイント──それは、極右候補のマリーヌ・ルペンが、フランス北端のダンケルクで、ヒジャブを巻いた10代の少女と笑顔で自撮りした瞬間だったかもしれない。
ルペンは、ヒジャブを「全体主義的イデオロギーの制服」と呼び、街頭を含むすべての公共の場から禁止したいと訴えてきた。そのため、ヒジャブ姿の少女と楽しげにポーズをとったのち、極右のライバルであるテレビ評論家エリック・ゼムールからは、「弱腰」になったと攻撃された。
これに対してルペンは、テレビ討論会でゼムール陣営にこう反撃した。
あなたに人間らしさというものを教えてあげましょうか?
この言葉は、広くインターネットで拡散されることになった。
ルペンはこう続ける。「あなたならどうするというのですか? 彼女からスカーフを引き剥がして、辱めるのですか?」
あるアナリストは、ルペンのイメージ戦略は「名人芸」の域に達していると評価する。
この戦略により、ルペンは彼女が掲げる政策よりも自分を「ソフト」に見せることに成功した。
また、緊迫と分裂をはらんだフランスの政治情勢の中で、ゼムールのような過激派の新参者に比べれば、自分は危険な存在ではないことをアピールしようとしている。
エリック・ゼムール(左)とルペンの選挙ポスター(Chesnot/Getty Images)