2022/3/16

【VC年表】経済の先端はベンチャー生態系の進化にあり

NewsPicks BrandDesign ChiefEditor / NewsPicksパブリッシング 編集者
「なぜ日本にはグーグルが生まれないのか」
 そういう議論を真顔でする日本人は、グーグルという会社は、米国において12番目につくられた検索エンジンであり、まったくの後発であったことを知らない。
 初期のグーグルを支援したVCが、名経営者となるエリック・シュミットを連れてきたことも知らない。
 グーグルに初期投資した名門VCのルーツは、半導体産業にあり、その半導体産業もVCによるリスクマネーで広がったという、発明家と資本家のサイクルの厚みも理解していない。
 さらにベンチャーエコシステムは、グローバルで現在進行中、いや加速的な変化が訪れているのが以下のグラフを見ればわかる。
 これまで世界中の産業のエンジン役となってきたユニコーン企業(企業価値1000億円以上)は、2015年には176社が存在し、その多くがアメリカのシリコンバレー発のものだった。ところが2021年に入って、ユニコーンの数は959社にまで激増しており、すでに半数近くがアメリカ以外の国から生まれるようになった。
 日本と同じように保守的な文化だと言われてきた欧州では、クランダムという北欧発のVCが、ヨーロッパ発のグローバルスタートアップをつくるのは無理だという「ガラスの天井」を粉々にした。
 そこから欧州でのベンチャー投資額は737億ユーロ(約9.5兆円、2021年9月時点)と過去10年間で倍に激増し、100社以上のユニコーンが生まれている。
 アジアでは、年間で1120億ドル(約12.3兆円)をベンチャー投資する中国だけが震源地ではない。猛追するインドでは通信料金の価格破壊などによって、数年前からスタートアップの「カンブリア爆発」が起きており、またシンガポールやインドネシアでは、その国で最も企業価値の高いトップ企業は巨大化したスタートアップたちだ。
 そんなVC産業は、半導体よりも前、意外な産業から始まった。

VCの起源、ハイリスクハイリターンの捕鯨産業

 19世紀のアメリカにおいて、捕鯨というのは巨大なビジネスだった。
 そしてこの捕鯨産業こそ、21世紀のスタートアップたちを成長させている、ベンチャーキャピタルの元祖だと言われている。
Norbert Hentges|iStock
 つまりVCというハイリスクハイリターンの仕事のエッセンスが、クジラ漁に凝縮され、そのビジネススキームが受け継がれているというわけだ。