2022/3/11

【歴史理解】ロシアが「反ナチス」にこだわる絶対的背景

NewsPicks編集部
歴史に詳しい人であれば、誰もが知る「人類史上最悪の戦争」がある。
それは、第二次世界大戦中にソ連とナチス・ドイツが戦った「独ソ戦」だ。スターリンに、ヒトラーという世界史上まれに見る独裁者が指揮した戦争は、4年で約3000万人が死亡し、「絶滅戦争」と呼ばれるほどの犠牲者を生んだ。
ロシアでは、ナチス・ドイツの侵略から国を守ったことから「大祖国戦争」とも呼ばれ、今なお国民の誇りともされる。その背景からか、今回の侵攻でも、プーチン大統領からは「反ナチス」という言葉が幾度も飛び出している。
今、ロシアが侵略を進めるなかで、我々はこの悲惨な戦争から得られる教訓はあるのか──。
そのヒントになる書籍がある。それが、独ソ戦の戦術や歴史感を描き、戦争書籍として異例の14万部のベストセラーとなった『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(2019年)だ。今回の侵攻を経てさらに増刷がかかるなど、さらに重みを増している。
NewsPicksでは、著者で、現代史家の大木毅氏に直撃し、改めて独ソ戦という異様な戦争の背景、そしてそこから人類が得られる教訓について聞いた。
INDEX
  • ①合理性なき戦い
  • ②ヒトラーVSスターリンの「絶滅戦争」
  • ③プーチンの「思想的準備」
  • ④今、僕らが学べること

①合理性なき戦い

──ロシアによるウクライナ侵攻が行われている今、あらためて第二次世界戦の独ソ戦を振り返る動きがあり、書籍『独ソ戦』にも注目が集まっています。
大木 今回のロシアによる軍事侵攻は、独ソ戦そのままの展開じゃないかと最近よく言われますよね。
そうした中で、この本も増刷がかかりました。ただ、何か後ろめたい部分はあります。
しいていえば、軍事的な展開というのはこの本のごく一部です。
ウクライナ侵攻がこれから、「独ソ戦」のような戦争になることを防ぐためには、何を許してはいけないのか、どういう考え方をするとまずいのか、ということを考える参考にしてもらえればうれしいです。
──独ソ戦が持つ、他の戦争と大きく異なる特徴は何ですか。