2022/1/1

【多彩】NewsPicksトピックスオーナーが選ぶ「ベスト本2021」

NewsPicks Inc. トピックスチーム
インターネットの時代にありながら、本はいつも新しい世界へと導いてくれる。あなたにとって、2021年に読んだ本の中で、最も影響を受けた「ベスト本」は何だろうか。
今回の記事では、NewsPicksで「トピックスオーナー」を務める12人に、2021年に出版された中で最も良かったおすすめの書籍を挙げてもらった。
トピックスオーナーとは、NewsPicksが2021年11月からお届けしている新サービス「NewsPicksトピックス」において、定期的に記事を配信する各トピックスの発信者。
NewsPicksトピックスでは、経営や組織論、中国・アジア、科学、社会基盤など、多岐にわたるテーマが並んでいる。
彼ら彼女らが読んできた2021年の最良の一冊は何か。推薦の理由とともに、全14冊を紹介していく。選ばれた14冊はどれも多彩で、新しい視点を与えてくれる。
INDEX
  • ❶ビジネス・経営📕
  • 江口亮介(TERASS社長)
  • 小野悠希(ハチドリ電力代表)
  • 齊藤千絵(知財戦略コンサルタント)
  • 広木大地(レクター取締役)
  • 三浦香織(ポジティブ取締役)
  • 守屋 実(新規事業家)
  • ❷アジア・グローバル 📗
  • 川端隆史(Kroll Associates Singapore)
  • 高口康太(ジャーナリスト)
  • ❸テクノロジー&サイエンス📘
  • 奥山輝大(脳神経科学研究者)
  • 須田桃子(NewsPicks副編集長)
  • ❹ソーシャルイノベーション 📙
  • 岡田陽介(ABEJA代表取締役)
  • 古里圭史(慶応義塾大学特任准教授)

❶ビジネス・経営📕

江口亮介(TERASS社長)

江口 シリコンバレーのスタートアップで圧倒的急成長を複数回経験した著者が、経営者に向けて爆速成長を実現、マネジメントするアドバイスを送ってくれる。
スタートアップ経営は、ほとんどの人間にとって初めての体験。正解がない中で、爆速で事業成長を目指すためのバイブルとなる本。
  • CEO(最高経営責任者)がやるべきでないことは何か。
  • COO(最高執行責任者)に求めるべき資質は何か。
  • いつからプロダクトマネジメントを分離させるべきか。
  • ベンチャーキャピタル(VC)との付き合い方はどうするべきか。
どれも痛快、かつアクションレベルで具体的な内容の連続で、読んだその日から役に立つ。スタートアップ経営の辞書として、手元に置いておきたくなる一冊。

小野悠希(ハチドリ電力代表)

小野 売り上げだけが高く、利益が低い商品やサービス。これらがなぜ良くないのかという考え方から始まり、著者が実際に経営している会社で実践している戦略が書かれた一冊です。
特に自社のサービス・商材のどこに弱点があるかを、著者の独自のツール「5段階利益管理表」に落とし込むノウハウが、とても実践的で勉強になります。
具体例を交えながら説明されているため、実際に本を読みながら私自身の会社の管理表を作成することで、「隠れコスト」と言われる利益を生まない要因を洗い出し、コストの改善にまでつなげることができました。
著者も本書の中で伝えていますが、これはどんな業種にも当てはまる考え方。概念や事例だけでなく、実践に使える本を探している経営者におすすめしたい一冊です。

齊藤千絵(知財戦略コンサルタント)

齊藤 脱炭素、循環型経済、ESG投資など、さまざまな言葉が飛び交っています。ここにたどり着くまでにいくつかの潮流があり、それが重なり合い大きなうねりになっています。
そうした経緯と流れがとてもわかりやすく簡潔に整理され、効率よく理解することができるのが、この書籍の特徴です。
一方、これらの取り組みについて「先進的企業が実施していること」と考える人もまだいるでしょう。しかし、この動きはどんどん裾野を広げ、義務化され、企業もエンドユーザーも行動変容を求められます。
つまり、どのビジネスに関わっていても、気候変動を理解することなしに今後の方向性を考えることはできません。
なんとなく苦手で距離をおいていた人にも、今後外部に発信していく人にも、概念整理のために一読をおすすめする良書です。

広木大地(レクター取締役)

広木 本書は、人権意識やモラルの延長線上といった「社会的正しさ」としての多様性ではなく、組織において創造的に物事を解決していくために、多様性がどのように作用するか、またどのような多様性が問題解決を促すかについて、さまざまな事例をもとにひも解いている。
無意識のバイアスを排除、若手による陰のボード、与えるものを評価していく文化構築といった、多様性を日常的に組織文化に取り入れていくための実践的な示唆に富んだ一冊。
ホモソーシャルで、単一カルチャーに染まってしまった企業をアップデートするための必読書です。

三浦香織(ポジティブ取締役)

三浦 パーパスとは、「組織がなぜ、何のために存在するのか」、いわゆる存在理由を示したものです。これは現代を生き抜く個人においても、非常に重要な考え方だと思います。
「なぜ」という本質を掘り下げていくことによって、物事への取り組み方、自己実現においても大きな違いが出てくるのではないでしょうか。それが個人の集合体となる組織を動かすとなると、パーパスは、航海図とも言えるでしょう。
この本は実際のコンサルティング事例を用いて、分かりやすくまとめてくださっているので、すぐに実践できるヒントが多く詰まっています。私自身も何度も振り返り、その度に気付きがある大切な一冊となりました。
三浦香織氏のトピックス👉
Healthcare Catalyst

守屋 実(新規事業家)

守屋 事業開発は、もっと効率化できる。
ポイントは2つ。①先駆者に学べ②先駆者につながれ
著者の加藤浩晃さんが、そう語りかけてくれている書籍です。
デジタルヘルス分野の事業を手掛ける人は、本書を熟読すると「知見の積み上げという下駄を履き、車輪の再発明を避けること」ができます。
なぜなら本書は、加藤さんが実際に受けたおびただしい数の事業開発相談がベースであり、それを現在進行形の事例として起業家本人が解説しているから。情報の鮮度と具体性に大きな価値があります。
なおポイントは、本当に「熟読」すること。
買うだけでは何も始まりません。本当にデジタルヘルスの事業開発をする人必携の一冊。限定2000冊ゆえ入手困難です。
守屋 コロナがもたらした社会変化の一つに、法人が統制する時代から、個人が活躍する時代への変化が一気に加速した、という点が挙げられるのではないかと思っています。
いわば、「会社のプロ」から「仕事のプロ」への進化の加速です。
その社会変化の兆しの加速は、まさに本書の「群れを統率するライオンと組織に忠実なイヌ」が圧倒的多数を占めていた社会から、「社命より使命のトラと自分に忠実なネコ」も気持ちの良い居場所を持てる社会への進化と言えます。
海外の流行物をカタカナにして上書きをしたような書籍ではなく、国内の身近な事例を平易な言葉と絵で示しつつ、ビジネスパーソンとしての在り方を説いた良書です。
守屋実氏のトピックス👉
新規事業家の、未来をつくるメモ

❷アジア・グローバル 📗

川端隆史(Kroll Associates Singapore)

川端 自動車産業は日本経済の基幹であり、世界的にも重要だ。それゆえに、自動車産業は現代ビジネスパーソンの基本知識である。
さまざまな書籍が出版されているが、新書かつテクノロジー時代のCASEへの移行を主眼にした書籍は意外と少ない。
専門知識や予備知識のない人でも、日本と世界(米国・欧州・中国)の最新事情を把握し、日本の自動車産業の生き残りにかけた課題を俯瞰できる
ユニークかつ現場主義の2人による共著書となっているが、違和感なく1つの分析、主張として最後まで読み切ることができる。手頃な価格と分量という点も嬉しい。
川端隆史氏のトピックス👉
アジア新興国のビジネス地経学

高口康太(ジャーナリスト)

高口 著者は一般誌でも引っ張りだこの人気作家で、著作も多いが、一冊一冊に新たなコンセプトを盛り込み、新鮮な驚きを与えてくれる。
前作『世界史とつなげて学ぶ 中国全史』では、地球の気候変動という長期的要因から中国史を描くという離れ業をやってのけた。
本作では中国との関係から2000年にわたる日本史の変化を描く。現代を生きる我々にとっても示唆的だ。
閉鎖的な世界に見えても、実は外部要因に大きく影響されていることに目を向けなければならない。
高口 「かわいそう」「ブラック労働」という紋切り型の報道ばかりのベトナム人技能実習生の世界を、彼らの目線から描いた傑作。どうしても同情できないダメっぷりやいい加減さに驚いたり、ため息がでたり。
しかし、その裏側には、もはやこうした脇の甘い人々しか日本に来てもらえなくなりつつあるという日本の衰退が隠されている。
日本の移民政策の未来を考えるためには、本書のような足元から見る視点は不可欠であろう。
高口康太氏のトピックス👉
デジタル・チャイナの裏側を掘る

❸テクノロジー&サイエンス📘

奥山輝大(脳神経科学研究者)

奥山 2021年に出版された中で、最も興奮しながら読み進められた本です。
脳科学と人工知能という近年急速に発展してきた2つのホットな科学技術が、今どのように融合し始め、今後どのような方向に進んでいくのか。
その未来像を、気鋭の研究者が科学的根拠に基づきながら解説してくれています。
研究レベルの科学的知識にとどまることなく、Neuralink(ニューラリンク)やKernel(カーネル)といった、今世界を騒がせているニューロテックベンチャーが作らんとしている潮流についても俯瞰でき、“SFを超えたSF感”のあるサイエンスの熱量を感じられる一冊です。

須田桃子(NewsPicks副編集長)

須田 1滴の血液から200種類以上の病気がわかる──。
そう謳ったベンチャー企業セラノスの巨大かつ大胆な不正を、敏腕記者が執念の取材で暴いていく過程を綴ったノンフィクション。
「事実は小説より奇なり」を地で行く展開で、ページをめくる手が止まらなくなりました。
虚構の検査装置が生まれた過程や徹底的な隠蔽工作が、多数の証言によって見てきたかのように再現されているのは見事。セラノスが脚光を浴び始めたのと同じ年に起きた、STAP細胞事件との共通点の多さにも驚きます。
蓋を開けてみればあまりにも杜撰(ずさん)な嘘を、なぜ多くの人が信じ、巨額の投資をしたのか。人間という生き物の不可思議さを学べる一冊でもあります。
須田桃子氏のトピックス👉
今を読み解くサイエンス

❹ソーシャルイノベーション 📙

岡田陽介(ABEJA代表取締役)

岡田 おそらく一番大きい問題は、私たちが「性善説」の惑星に住んでおらず、「性悪説」の惑星に住んでいるという誤解から、誤った意思決定を生んでしまうことだろう。さまざまな噂や物語によって多くのバイアスがかかっていることを、改めて強く認識した。
本書で展開されている内容は、今後の社会基盤を構築する上で、必須の前提条件になると感じる。
これまで私は、「性善説に基づく経営」を行うことが、経営者としての信念であった。そして、このことを周りに話すとばかにされることが多くあった。
しかし、本書を読んで強く勇気づけられたとともに、今後もスタイルを変えずにしっかりと信念を貫いていこうとする決意を持った。
岡田陽介氏のトピックス👉
AI/DXと社会

古里圭史(慶応義塾大学特任准教授)

古里 最先端のソーシャルイノベーション専門のメディアである「スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー(SSIR)」で発表された論文の中から、選りすぐりの10本の論文を取り上げたのが本書。
10本の論文はどれも素晴らしく、社会の何かを変えるために新しい仕組みを作り、それをより多くの人々の賛同や理解を得ながら、維持し、インパクトを創出していくためのヒントや気付きにあふれています
非営利事業やソーシャルセクターでチャレンジしている方だけでなく、一般のビジネスパーソンから学生まで、誰もに読んでいただきたい一冊です。
古里圭史氏のトピックス👉
エスノグラフィパーク
この記事の読みたい段落に戻る
  • ❶ビジネス・経営📕
  • 江口亮介(TERASS社長)
  • 小野悠希(ハチドリ電力代表)
  • 齊藤千絵(知財戦略コンサルタント)
  • 広木大地(レクター取締役)
  • 三浦香織(ポジティブ取締役)
  • 守屋 実(新規事業家)
  • ❷アジア・グローバル 📗
  • 川端隆史(Kroll Associates Singapore)
  • 高口康太(ジャーナリスト)
  • ❸テクノロジー&サイエンス📘
  • 奥山輝大(脳神経科学研究者)
  • 須田桃子(NewsPicks副編集長)
  • ❹ソーシャルイノベーション 📙
  • 岡田陽介(ABEJA代表取締役)
  • 古里圭史(慶応義塾大学特任准教授)