2021/10/2

【CEO直撃】なぜブリヂストンは69年ぶり赤字を「選んだ」のか

NewsPicks ジャーナリスト
「企業再建」というと、どのようなイメージが浮かぶだろうか。
一般には、本業で利益を出せなくなり、追い込まれた企業が泣く泣くリストラに追い込まれる……そのようなイメージであろうか。
だが、今の時代や、それでは手遅れだ。利益が出ている段階、お金にゆとりのある段階から企業再建に着手する必要がある。健康と同様、「病気になってからでは遅い」のだ。
かの有名なピーター・ドラッカーは、これを「自らを陳腐化させる」と表現した。
このような題材で、生きた教材とも呼べそうな企業がある。世界的なタイヤメーカーのブリヂストンだ。
同社は2020年度に69年ぶりの最終赤字に沈んだ。加えて、2023年までに世界拠点の4割を削減する計画だ(2019年比)。
ただし、ブリヂストンのケースは、「追い込まれて泣く泣く」タイプとは一味違う。むしろ、企業体力があるうちに一気に企業再建に乗り出すため、赤字を「利用」したようなのだ。
そこで、CEO(最高経営責任者)の石橋秀一氏に直撃インタビュー。
かつて、「史上最大の失敗劇」と言われた、ファイアストン買収の試練を乗り越えた過去も踏まえながら、赤字に込めた「覚悟」に迫る。
INDEX
  • 倒産を3回考えた
  • 赤字はメッセージ、赤字は手段
  • 西と東のガチンコ勝負
  • 負け犬が、駆け上がる
  • お前らが飛び込めよ

倒産を3回考えた

──CEOに就任した2020年3月は、まさに「コロナショック」で経済が止まったタイミングでした。
石橋 僕は、1989年から14年間、ブリヂストンが前年に買収したファイアストンに出向していました。当時、「日本企業で史上最大の買収」と言われ、1991年に500億円の赤字を出した時には、「史上最大の買収失敗」と世間に叩かれました。
500億円の赤字を出した時は、日本の銀行やアメリカの関係者に助けてもらいましたが、2000年初頭にファイアストンがリコール事件で揺れていた時は、もう誰も助けてくれなかった。「チャプター11(倒産法の申請)」を3回考えたほどです。
最終的に日本(ブリヂストン本体)から1500億円ほど増資してもらって、何とか持ちこたえました。
そうした修羅場をくぐってきたので、COVID-19(新型コロナウイルス)の影響で先が見えなかったとはいえ、会社がつぶれるほどとは思いませんでした。
──史上最大の失敗ともいわれた経験から、得た教訓は何ですか。