2021/10/2

【中村憲剛×岩政大樹】代表に同居するかつてない強みと課題

10月7、12日に行われるカタールワールドカップアジア最終予選は、いきなり正念場を迎える。ホーム初戦でオマーンに敗北し、中国戦は1対0の辛勝。
「負けられない試合」としてすっかりおなじみのこの戦いは、「負けた」という事実だけでなく、「内容的にも完敗だった」ことに衝撃があった。東京五輪から続く「日本代表」における議論のポイントは、「采配」へと転じていき、森保監督の手腕を問う声も多く上がる。
では、いったい現在の日本代表はどのレベルにあるのか。2018年のロシアワールドカップ以来、どんな成長を遂げ、そしていまの課題はどこにあるのか。
ともに南アフリカワールドカップのメンバーでもり、サッカー界きっての理論派で知られる中村憲剛氏と岩政大樹氏に分析してもらった。

日本代表にある二つの視点

──まず現在の日本代表をどう見ているかからお聞かせください。
中村 今の状況に対して、二つの見方をしていかないといけないと思います。ひとつは、積み上がってきているという事実。もうひとつが、積み上がってきた中で出てきた課題にどう対処すべきか、という点です。
ひとつ目の「積み上げ」は森保監督のスタイルである「選手の個性をうまく引き出す」やり方によるものです。
海外でプレーする選手が大半を占め、加えて彼らはコンスタントに試合に出ています。そういう選手たちの経験値、成長がそのままチームの成長になる。
これは、森保さん自身が、「俺のサッカーは絶対にこうだ」ではなく、「いる選手たちの総和を大きくしていこう」というスタイルを取っていることが大きいと思います。
「いる選手の個性をうまく出す」やり方で、日本代表は確実に前進したと言えます。ラージグループを作り、たくさんの候補選手を競争させ、そのときどきで調子のいい選手を組み合わせていく。
このスタイルは、選手たちの相互理解が深まるほどチーム力は上がっていきます。東京五輪はその象徴で、しっかりと準備期間があって選手同士がプレーをわかりあえていたことが、グループステージの躍進につながったと言えます。
ただ、そんな中でもう一つの見方が出てきました。
積み上げの中で、チームの幅をどう作るか、ということです。例えば、これだけの選手がいて、相手とのかみ合わせがよければある程度の試合ができます。前からプレスにいって、連動して奪って、攻撃を仕掛けられる。でも、それができなかったり、させてもらえなかったときにどうするか。
この課題に対して、ここまでの試合を見ても、まだまだなのかなという気がします。「選手の幅」は増えたけど、それに伴う「チームの幅」が見えてきていない。これが日本代表の現在地だと思いますね。
岩政 僕も憲剛くんの意見に同意です。
まず選手の成長がもたらした日本代表のレベルは確実に上がっていると思います。特に、センターバックの二人・吉田麻也と冨安健洋のコンビと、ひとつ前のボランチ遠藤航、このあたりは過去の日本代表でも屈指じゃないですかね。
守備の安定というところでここは大きく前進したと言えます。
一方で「起こりうること」に対する想定ができているか、という部分がこれからの課題だと思います。これは選手もそうだし、監督もそうです。特に僕は今、監督業をさせてもらっていますから、この点の重要性はすごく感じています。