2021/6/19

【直言】ビットコインは、今すぐ「脱炭素化」せよ

NewsPicks 副編集長(NY支局)
ビットコインが揺れている。
昨年10月ごろから凄まじい急騰を見せ、今年4月には6万ドル以上(約660万円)の価格をつけた後、現在は3万ドル台をさまよっている。その停滞の直接の原因は、明らかにテスラ創業者イーロン・マスクによる5月12日のツイートだった。
テスラは、ビットコインを用いた自動車購入を停止する。我々は、ビットコインのマイニングと取引に用いられる化石燃料、特に一番排出量の多い石炭の急速な増加を懸念している
ビットコインがCO2を排出するのは、プログラムの根幹に「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」というマイニングを伴うプロセスがあり、それが世界中で膨大なエネルギーを消費するコンピュータを動かしまくるからだ。
世界が気候変動の戦いに向かう中、PoWからすぐさま脱却しなければいけないーー。
暗号通貨の世界からこう声を上げる人物がいる。ソフトウェア企業「リップル」の創業者の一人であるクリス・ラーセン氏だ。
ラーセン氏は、リップルのカーボンニュートラル目標や「暗号通貨気候協定」への参画を先導するほか、個人としても気候変動の財団を立ち上げるなど、この分野への問題意識を強く持つ人物である。
その彼が解くビットコイン、そして暗号通貨の未来の姿とはーー。
INDEX
  • ビットコインの「中央集権化」
  • クリプトの「炭坑化」がいいはずがない
  • 暗号通貨の「理念」が消える
  • ビットコイン「3つのコアグループ」
  • PoWは「天才的プログラム」だった
  • クリプトの「部族」を乗り越える
  • 「死の谷」を超えるために

ビットコインの「中央集権化」

──ラーセンさんの今のお立場についてお聞かせください。
私はリップルの会長であり、共同創業者の一人です。役割としては、取締役会で経営陣をサポートすることですが、実は外部でサステナビリティの事象にも取り組んでいます。
私自身はサステナビリティという言葉をあまり使いません。あまりにも幅広い言葉だからです。むしろ、気候変動との戦い、戦争だと思っています。重要なのは、大気中に放たれるCO2が多すぎることであり、危機的なレベルにあります。とにかく早く、動かなければいけませんし、無駄にしている時間はありません。
──特にビットコインが生み出すCO2の問題で声を上げていらっしゃいますね。
まず、大前提として、私は反ビットコインではありません。ビットコインのコンセンサスの仕組みである「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」に問題提起をしているのです。この2つは、混同されることもありますが、実は独立したものです。
つまり、暗号通貨、ブロックチェーンに、わざわざエネルギーを大量消費するPoWを使わなければならない絶対的な理由はないのです。