2021/6/3

【伊藤羊一】学びたい渇望が自分を変え、磨き上げる

Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長
リーダーシップ育成を熱く語ると言えば、この人。Zアカデミア学長の伊藤羊一氏だ。

今年春から、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の初代学部長に就任し、次世代育成にも本腰を入れる。

『1分で話せ』などの著作は累計65万部を突破し、「伝えるプロ」としての支持も集める伊藤氏だが、20代はつらい低迷の日々を送った。信条に掲げる「人は変われる」につながる仕事の哲学とは。(全7回)
伊藤羊一(いとう・よういち)/Zホールディングス Zアカデミア 学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長
1967年東京都生まれ。1990年東京大学経済学部を卒業、日本興業銀行に入行。2003年プラスに転じ、執行役員マーケティング本部長、ヴァイスプレジデントを歴任。2015年ヤフー(現Zホールディングス)に転じ、次世代リーダー開発を行う。グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ科目の教壇に立つほか、多くの大手企業やスタートアップ育成プログラムでメンター、アドバイザーを務める。2021年4月より武蔵野大学アントレプレナーシップ学部学部を開設、学部長に就任。著書『1分で話せ』など多数。
INDEX
  • 転職して新たな壁にぶつかる
  • 相手を説得するのが苦手
  • 明日の仕事にすぐ使いたい!

転職して新たな壁にぶつかる

たくさんの人の助けを借りて、マンション融資の案件を成功させることができた僕は、27歳にして初めて「仕事の価値」を体感しました。
長らく抜け出せなかった暗いトンネルから脱し、世界がずいぶんと明るく感じられました。あんなに苦しんでいたうつ症状もいつの間にか気にならなくなっていました。
やがて、ご縁あって36歳のときに文具・オフィス家具の製造販売会社、プラスに転職。銀行からメーカーという畑違いの業界に行く人も相当珍しいのですが、僕は金融を通じてさまざまなお客さんと関わる中で「実業」に関心を持つようになっていました。
まったく未経験の業界でしたが飛び込み、まったく未経験の物流の部門で働き始めました。
(出所)プラスのホームページ
新たな壁はすぐにやってきました。
うつから復活して以降、なんとか「気合」で仕事を乗り切っていた僕でしたが、経験も知識も乏しい分野に挑んですぐに、自分の能力の限界を直視することになったのです。
物流の仕事は判断の連続。なのに、僕は答えを出すまでにとにかく時間がかかる。材料を集めて、一晩唸って考えて「こっちかな」とやっと出てくるような答えを、ベテランの部長は一瞬で導き出す。
異業種から転職したばかりなのだから仕方ないと言えばそうなのかもしれませんが、僕は「決められない自分」をどうにか変えたいと悩んでいました。