サウジ、カタール和解へ 断交3年半、国境開放
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サウディアラビア+UAE同盟がカタールとの外交関係を断絶したのは、2017年6月のことでした。この措置は、両国の中東での覇権を確立しようという野心にきっかけがあります。中心人物は、サウディアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン王太子ですが、彼はむしろUAEのアブ・ダビとイスラエルに上手く乗せられて、使われていた、というところが大きいです。
サウディアラビアの主敵はイランのはずでした。これは、イランの国力が大きく、イラクやレバノン、イエメンに絶大な影響力を持っているからです。イランのシーア派を最大の敵と見るサウディアラビアの宗教イデオロギーも背景としてあります。
しかし、サウディアラビアとイランでは、戦争になれば確実にイランが優位でしょう。米軍が主力となってくれない限りは、サウディアラビアはイランとの戦争には踏み出せません。
それで、サウディアラビアは、アラブ諸国(エジプトやスーダン)に資金をバラまいてクー・デタを起こさせました。これは、サウディアラビア+UAEが敵視していたムスリム同胞団を潰す、という目的もありました。このあたりの経緯は複雑ですが、こちらの記事が捕捉になるでしょう。
【暗躍】トランプも骨抜き。UAE皇太子の「人たらし力」
https://newspicks.com/news/3957175/body/
サウディアラビア+UAEは、軍事的勢威を誇示しようとして、まず弱い敵(と彼らが思った)イエメンに2015年に侵攻しました。数週間で片づけるつもりだったでしょう。ところが、損害を出し続けて今に至っても勝てません。
次に狙った「弱い標的」がカタールでした。サウディアラビア+UAEは軍事占領したかったのですが、米国政府は許可しませんでした。カタールには米軍基地もあり、米国の同盟国です。
名分としては、カタールはムスリム同胞団を保護している、そしてイランと貿易などの関係がある、したがってテロ支援国である、というものです。言いがかりですが、ムスリム同胞団の指導部が、主にトルコとカタールにいるのは事実です。ムスリム同胞団をテロ組織と評価するかどうかは、国によりますが。
今やサウディアラビア+UAEの中東覇権の道行きはグダグダで、カタールに言いがかりをつけている余裕もないのでしょう。明日リヤドで開催されるGCCサミットにカタールのタミーム首長が出席。その席上でサウジアラビア、UAE、エジプト、バーレーンがカタール断交処置を撤回するとともに、カタールは4カ国に対する訴訟を取り下げることで合意したとのことです。
この合意はトランプ政権、中でもクシュナー氏による仲介であったと報じられています。
色々お騒がせなトランプ政権でしたが、こと中東外交についてはISを滅ぼし、自称カリフのバグダディを殺害。
かえす刀で対IS戦争で活躍し、イラク、シリアを席巻した革命防衛隊のソレイマニ司令官を暗殺することでイラクやシリアでのイランの勢力を削ぐ一方、イスラエルとUAE、バーレーン、スーダン、モロッコなどの国交回復を実現させて対イラン、対トルコを軸に中東情勢を落ち着かせることに成功しました。
最終的に国防権限法の成立で阻止されましたが、イラク、アフガニスタンから撤兵し、アメリカにとって最も長い戦争を終結させる道筋をつけました。
歴代政権とは異なり、これらを大掛かりな軍事力を用いることなく実現したことは間違いなく評価に値するだろうと思います。
元々トランプ政権の中東政策は、「世紀の取引」と言われるイスラエルとパレスチナの領土交換によって中東和平を実現するという明確な指針がありました。
バイデン次期大統領がこの路線を引き継ぐのか、全く新しい中東政策を展開するかは不明ですが、少なくともここまではトランプ政権のシナリオに各国が乗っているように見えます。昨夜は寝ようかと思ったところへのビッグニュース。
3年が10年に感じられるくらいには長い長い断交期間でした。
結局、何が最大の要因だったのか?は闇の中でしょうね。UAEの高官クラスが下品なカタール批判を繰り返したりしていましたが、あれらはどうするんでしょうね。
この3年間でカタールの自給自足率は大きく飛躍しました。断交前はサウジアラビア企業の乳製品や青果物がたくさん輸入されていたのが、今回の断交解除で今度はカタール企業の製品がサウジアラビアへ輸出されることになるはず。サウジアラビアの解放政策と相まって、どのような時代となるのか非常に楽しみになってきました。
個人的には今年はハッジに行けるか行けないかで揉めずに済むかと思うとホッとします。