2021/1/7

【軍地彩弓】苦境のアパレル業界「生き残りの条件」

ファッション・クリエイティブ・ディレクター
「アパレル不況」という言葉が、一般的にも知られるようになってから久しい。
トレンドのハイサイクル化、セール品・原価の低いワンシーズン商品の増加、これらによって陥った大量の廃棄物、オンラインへの対応の遅れなど。
かねてから指摘されてきた構造的な問題に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大による自粛生活が、決定的な打撃を与えた。
英市場調査会社ユーロモニターインターナショナルの調べによると、世界のアパレル市場はここ数年、なんとか3〜4%の成長を維持していたが、2020年は17.3%のマイナス成長となった。世界のファッション史の中で、2020年という年は間違いなく、節目の年として語り継がれていくだろう。
そして今日本では、2度目の緊急事態宣言が発出されようとしている。そうなれば再び百貨店をはじめとするリアルな売り場は閉まり、売り上げは再び厳しくなっていく。
今後、業界を取り巻く環境はどう変わっていくのか。
プロピッカーでファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓氏に、2021年以降のアパレル・ファッション業界を占ってもらった。「ネガティブな面ばかりではない」と語る、その真意は。
3つのポイント
①D2Cのマイクロ化と「エセD2C」の淘汰が起きる。
②地方のリアル店舗は生き残るも、都心店舗はOMO化できない店舗は淘汰される。
③2020年に花開いた「アバターファッション市場」が拡大する

ファッション業界は変われるか

2020年を振り返れば、誰もが予想できなかった新型コロナウイルスという見えない敵との戦いの一年でした。ロックダウンや外出自粛による世界中の経済活動への打撃は計り知れません。
そして、あらゆる業界の中でも、ファッション業界はとりわけ大きな打撃を受けました。減益、閉店、倒産などネガティブな部分ばかりクローズアップされますが、一方でこのコロナ禍で急速に進んだポジティブな変革もあります。
旧態依然として変われなかった業界が、変わらなくては存続できなくなった。変わらないのではない、「変わらなくてはならない」のです。