2020/12/16

【超解説】脳は「機械」として捉えよ

NewsPicks編集部
誰もが知るように、脳は「頭の中」にある。
だが、脳は「臓器」なのかと聞かれると、答えはそう簡単ではない。というのも、近年の脳科学は、脳を「機械」として捉えることで一気に発展した側面があるからだ。
最先端の脳科学者たちは、AIなどのコンピュータ・サイエンスの発展を背景に、生命を遺伝暗号で書かれた設計図から読み解き、さらにはその設計図を書き換える遺伝子工学を駆使して、近年、目覚ましい成果を生み出してきた。
そのフロンティアに位置するのが、特集初回でも取り上げた「光遺伝学(オプトジェネティクス)」だ。
光を用いて、生きた動物の神経細胞を自在にコントロールするこのテクノロジーは、まさに機械と同じように、脳をインプットとアウトプットの因果関係で捉えることを可能にした。
今や、実験動物レベルでは「記憶」や「感情」の書き換えすらも実現しつつある。
NewsPicksは、この潮流の総本山の一つである米マサチューセッツ工科大学(MIT)で修業を積み、今も東京大学で研究に打ち込む奥山輝大・准教授を迎え、現代の脳研究の「真髄」を解説してもらった。

脳研究の2つの潮流

奥山 私が所属する東京大学のキャンパスは、緑にあふれています。航空写真で見ると、森の中に理学部、工学部、医学部、農学部──と学部ごとに建物が分かれていて、実は今挙げたすべての学部で、それぞれ脳の研究をしている。
東大に来る前にいたのが、アメリカの東海岸の都市、ボストン近郊のケンブリッジにあるMIT(マサチューセッツ工科大学)の利根川進ラボでした。