2020/10/16

【核心】統計学の権威が語る、「データスキル」の学び方

NewsPicks NY支局長

新たなデータの時代

新型コロナは、世界をデータの洪水に巻き込んだ。
感染者数や死亡者数、陽性率など、あらゆるコロナ関連のデータが連日ニュースやSNS上をにぎわせる一方で、混乱の中で、真偽が不明な怪しいデータも蔓延した。
「今こそ、データが意味することをきちんと理解するスキルが必須だ」
こう指摘するのは、統計学の世界的権威である英ケンブリッジ大学のデビッド・シュピーゲルホルター氏だ。同氏は、データによる問題解決には、統計学のいろんな公式やプログラミングを学ぶ前に、もっと重要なことがあると指摘する。
それは統計学が持つ「アート」の側面だという。
欧米での大ベストセラー『The Art of Statistics(訳:統計学のアート)』『Sex by Numbers(邦題:統計学はときにセクシーな学問である)』でも知られる氏に、現代に求められる「データスキル」のすべてを聞いた。

統計が「アート」である理由

──あなたは、データと統計を使いこなせば、魔法が起きるといった論調を戒めていますね。
「数字自体が自ら話すことはない。我々が代わりに話し、意味を吹き込むのである」という名言があります。
統計学の名著『The Signal and the Noise(邦題:シグナル&ノイズ)』の著者であり、人気サイトFiveThirtyEightの運営者であるネイト・シルバーの言葉です。これは大変重要な指摘で、私も自著の冒頭に引用したほどです。
かつてデータサイエンスが叫ばれ始めたころ、ビッグデータの時代は、データが「秘密」を明らかにしてくれるので、従来の統計学の考え方はもはや必要ないという論調がありました。
これは完全な妄想だと考えています。