2020/10/16

【新潮流】あなたの「だ液」で、がんが見つかる時代が来た

金藤 良秀
NewsPicks編集部 特約記者
あなたの「だ液」からがんリスク検査ができる──。そんな画期的な技術がすでに実用化され、普及が進んでいる。
研究を進めるのは、山形県鶴岡市に本社を構える企業。その名は「サリバテック」。社名の通り、「だ液(saliva)」を使って、がんリスク検査ができるキットを開発している企業だ。
東北大学と慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)との共同研究プロジェクトからスタート。現在は、損害保険大手のSOMPOホールディングスや、生命保険大手の日本生命、製薬会社の日水製薬なども出資し、株主に名を連ねる。
創業者で大株主、そして社長を務めるのは、医師であり大学で教鞭も執ってきた砂村眞琴氏だ。
サリバテックが展開するがん検査は、主に医療機関で行われてきたが、今年6月には健康組合を通じて企業にも導入され始めた。
さらに、7月には一般消費者向けにネット販売も開始。自宅でがんリスク検査を実施できる体制も整えている。
検査数は、2019年度に年間5000件に達し、2020年度は1万件を見込んでいる。
消化器外科の医師として、すい臓がんと長年向き合ってきた砂村氏は、がんの早期発見に対する思いがひときわ強い。「だ液」にはどんな可能性があり、私たちの未来をどう変えるのか。
砂村氏がNewsPicks編集部に語り尽くした。
砂村眞琴(すなむら・まこと)/サリバテック代表取締役、医師
1953年生まれ。1981年、弘前大学医学部卒業後、消化器外科として主にすい臓がんの診療・研究に尽力。2007年、東京都練馬区の大泉中央クリニックの院長に就任。2013年12月、サリバテックを創業。東北大学医学系研究科分子病理非常勤講師、東京医科大学八王子医療センター兼任教授、慶應義塾大学医学部非常勤講師。

だ液から「がん」がわかる仕組み

──なぜ、だ液からがんリスクがわかるのですか。
砂村 まず人間の体には遺伝子という設計図があり、タンパク質や脂質などを作り出しています。タンパク質などは酵素で分解されたりして、人間の体には必要ないものになっていきます。
そういうクズのようなものは「代謝物」と呼ばれ、だ液や血液、尿などに出てきます。