2020/9/9

【成長戦略】7年8カ月でできたこと、できなかったこと

平岡 乾
NewsPicks 記者
アベノミクスは「第3の矢」に成長戦略を掲げ、各種の規制改革や、労働市場改革、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の締結など経済外交まで、さまざまな政策に取り組んだ。

その中で、2013年から2019年にかけて、経済政策の司令塔である経済財政諮問会議の民間議員をはじめ、政策の議論でまとめ役を務めた学習院大学の伊藤元重教授が安倍政権の経済政策を振り返る。
伊藤元重(いとう・もとしげ) 1951年静岡県出身。学習院大教授、東京大学名誉教授。1974年東京大学経済学部卒業、1978年ロチェスター大学博士課程修了、翌年経済博士号取得。1993年同大教授。2016年より現職。著書に『入門経済学第4版』など。

財政赤字のGDP比率は半減した

──2012年末に安倍政権が発足した当時、日本はどんな経済状況にあったのでしょうか。
2012年の名目GDPは約490兆円でした。ピークだった1997年の530兆円強から、15年で40兆円も下がるということは、一言で表現するなら「ひどい状態」です。
経済情勢でいえば、2012年時点でいいものは何もなかったのです。
当時は、デフレの悪循環によって税収も下がり続けていたので、債務の返済も難しい状況でした。実際、第2次安倍政権発足前は、財政赤字もGDPに対して7、8%ありました。
それが7年8カ月のアベノミクスによって、2019年には名目GDPが550兆円まで伸びました。
経済が多少元気になったので、財政赤字の対GDP比率も改善しました。コロナウイルス感染拡大前時点での見通しですが、2020年のGDPに対する財政赤字比率は、3%を割る見通しになるところまできました。
また失業率も政権発足当時は5、6%あったのが、3%を切るところまできています。
──アベノミクス「3本の矢」(金融緩和、財政政策、企業の投資拡大)のうち、1本目の金融政策をどう評価しますか。