2020/9/10

【直撃】50年ロングセラー「シヤチハタ」驚きのデジタル戦略

NewsPicks特約記者
1968(昭和43)年の発売以来、「シヤチハタ」の累計販売本数は何と1億8000万本に達する。
半世紀を超えるロングセラーであり、現時点でも年間200万〜300万本、それこそ「判で押したように」売れ続けているのだ。
細かいことを言えば、正式の表記は「シチハタ」である。「シチハタ」ではないからご注意を。
漢字で書くと「鯱旗」。金の鯱(シャチホコ)で有名な、名古屋の会社だ。鯱旗印が会社のシンボルマークだったから、「シヤチハタ」なのだ。
ちなみに、「シャチハタじるし(旗印)」である。「シャチハタいん(ハンコ)」ではない。
そして、あまり知られていないことだが、「シヤチハタ」は社名であって、商品名ではない。「Xスタンパー」というのが商品名である。
それではどうして、「シヤチハタ」という呼び名が定着したのだろうか。
販売促進のために、文具店、ハンコ店、デパートなどに設置した「ネームタワー」(ディスプレイケース)のおかげだ。
「シヤチハタ」の名前がドンと書かれており、「Xスタンパー」という言葉はどこにもない。
最も大きいネームタワーには2940本のシャチハタを並べることができる。それ以上になると、「タワーが倒れた時に死人が出る」とディスプレイ屋にくぎを刺されたらしい。
もうひとつは、タレントの大野しげひさを起用して、「シヤチハタネーム、持ってるかい」とCMで連呼させたことだ。テレビによる「刷り込み」、恐るべきである。
日本人の名字は10万〜20万あると言われている。幅がやけに大きいのは、たとえば同じ「二村」でも「にむら」や「ふたむら」といった読み方があるからだそうな。
10万の名字に対して2940本と聞けば少なく感じるかもしれないが、よほど珍しい名字でもなければ見つかるはずだ。

社長にも分からない「200万本の理由」