2020/8/15

【水野敬也】本物のノウハウは、人を楽(らく)から遠ざける

文響社
大人気シリーズ『夢をかなえるゾウ』の最新作、『夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神』(文響社)を刊行した作家の水野敬也氏。
インタビュー第2話では、シリーズ400万部のヒットを生んだ「創作メソッド」の核心に迫る。

人間にさほど「オリジナリティ」はない

──『夢をかなえるゾウ』もそうですし、もうひとつのベストセラーである『人生はニャンとかなる!』シリーズ(累計200万部)もそうなのですが、水野さんの作品の特徴として、「名言」や「偉人のエピソード」のキュレーションがとても巧みだということが挙げられます。どうやって、あれほど大量の“ドンピシャ”な事例を見つけてくるのですか?
水野 おそらく僕の本を読んだ人の多くが思っているのは、こういったことではないでしょうか。
「水野の頭の中には膨大な名言やエピソードのストックがあって、本を書くたびにそのストックから引き出している」。
ただ、これは誤解なんですね。
たとえば、『雨の日も、晴れ男』という本を書いたとき、ラストに「神は人を幸福にも不幸にも出来ない。ただ出来事を起こすだけ」という文章を、自分で思いついて入れたんですよ。
この一文が浮かんだとき、もう全身に鳥肌が立って、「俺って天才だな!」と思ったのですが、後になって、実は16世紀にモンテーニュってやつが同じことを言っていたというのを知ったんです。
モンテーニュ(Photo by Apic/Getty Images)
僕は、「人間にはそれほどオリジナリティはない」というふうに考えています。今の時代に生きる人が考えるようなことは、必ず歴史上の誰かが考えたり、発言したりしているんですよね。
『夢をかなえるゾウ』でも、カジュアルに名言やエピソードが散りばめられているように思われるかもしれませんが、僕が執筆しているときは、エピソードの部分はすべて空白です。
そこに入る予定のものは、僕自身も実際に経験したことや、本音として「絶対にこれは正しい」と言い切れるようなもの。それを、僕以外の過去の人が経験していないわけがないという確信がある。
そこで、アテもないまま図書館まで探しにいくわけです。