【大転換】「インターネット新時代」がやってくる

2020/7/10

「自由放任主義」の終焉

まるで、ダムが決壊したかのようだった。
先週、ネット企業の大手が相次いで、数カ月前には考えられなかった行動に出た。事実上の無法地帯だったソーシャルサイト「Reddit(レディット)」は、何千にも上るヘイトスピーチのフォーラムを閉鎖。その中には、ネット上で最大規模のトランプ大統領を支持するフォーラムも含まれていた。
アマゾン傘下のゲーム動画プラットフォーム「Twitch(ツイッチ)」もトランプのアカウントを「ヘイト行為」があるとして一時停止。YouTubeも人種差別的なチャンネルをいくつか閉鎖し、問題動画の投稿歴がある人気クリエイターにペナルティを科した。企業の広告ボイコットに直面しているフェイスブックは、暴力的な反政府ネットワークによる利用を禁止した。
これらの事象をそれぞれ単独で見ると、大した変化ではないように思えるだろう。こうした「線引き」は、ソーシャルメディアではしょっちゅう起きている。
しかし、すべてが一度に起きたとなると、何か大きなうねりが起きているように感じる。
それは「ワイルド・ワイルド・ウェブ」──自由放任主義で成長させるというテック業界の10年に及んだ実験──の終焉の兆しではないのか。そこに新たに形作られようとしているのは、これまでよりも責任の所在を明確にし、自己を省みようとする、思慮深いカルチャーだ。
(Yuichiro Chino/Getty Images)

「成長」を遂げたテック企業

この変化は、レディットのスティーブ・ハフマンCEOの言葉にも見て取れる。
ハフマンは最近、ワイルド・ワイルド・ウェブの基本的な価値観のひとつを否定した。それは、「プライベートのインターネットフォーラムは、あらゆる意見に議論の場を提供するために存在する」という価値観だ。たとえそれが、どんなに有害な意見であっても。
ハフマンは今週、筆者のインタビューに応じ、こう語った。
「われわれが15年前にレディットを始めたとき、何も禁止しませんでした。若者にありがちなように、われわれがそういった主張をするのは簡単なことでした。第一に、私が硬直した政治信念の持ち主だったから。第二に、私には現実世界での経験と視点が欠けていたからです」