【異色対談】今、小池都政が目指すべきことを語ろう

2020/7/9
7年間にわたって準備してきたオリンピック・パラリンピックの開催は「ない」。
ジャーナリストの津田大介氏の問いかけに対して、社会学者の西田亮介氏は、そう言い切る。
コロナ対策に追われる一方で、五輪中止となれば国・東京都に対する影響は甚大だ。
アフターコロナの時代をにらみ、東京はどうアップデートしていくべきなのか。次なる成長のエンジンはどこにあるのか。
異色の対談を通じて、コロナ禍・五輪中止の果ての首都東京のあり方を浮き彫りにした。

都民はコロナ対策に「怒っていい」

津田 新型コロナの感染が拡大したことで、財政的には豊かだった東京の余裕が失われつつあります。
東京都の貯金に当たる財政調整基金は大幅に減少しました。都の休業要請に応じた事業者に「感染拡大防止協力金」としてばらまいたためです。
第2波が来れば、都はまた休業要請をしなければならない。しかし、もう「貯金」はありません。
西田 都債発行のポテンシャルなど、貯金がなくなっても財政的な強さがただちに失われることはない。
だけれども、僕は持続化給付金や都の協力金のような給付措置はそもそも間違っていると思うんです。
事業者に対する給付金は効果が判然としません。そして、100万円や200万円といった規模で事業がなんとかなるわけでもありません。
むしろ、連帯保証人なしで繰延可能の「無利子貸付」で対応していくのが好ましい。
もちろん、生活者への現金給付は必要。これは10万円が100万円でも迅速にやるべきです。
津田 小池都知事にしてみれば、持続化給付金を決定しかねていた安倍首相との対決姿勢を打ち出すことで、協力金は最高の「選挙対策」になりましたね。
西田 それに対して、都民はもっと怒ってもいいはずです。広く集めた税金を、効果があるかもよくわからないのに、ばらまいたわけですから。
津田 舛添要一・元都知事も、「無利子貸付しかない」という発言をしていました。
西田 有事の政策の基本は、国も自治体もそうなっています。
第1次緊急対応の時に、国の緊急対策予算が153億円だったことが批判されましたが、同時に日本政策金融公庫では5000億円の貸付枠が追加されています。
政府の対応は小規模で後手と言われますが、日本の最初の経済対策は153億円ではなく、5000億円規模でした。そういったことは全く周知されていません。

五輪の開催は「ない」

津田 オリンピック・パラリンピックの延期によって、東京都にも追加負担が求められます。コロナと五輪という2つの不確定要素を抱え込んでしまった。
西田 オリンピックの開催は、ないですよ。
撮影:TOBI
津田 中止せざるを得ないと?
西田 仮に開催したとしても「これはオリンピックかな?」とみんなが疑うようなものになるでしょう。「無観客」でも難しいのではないでしょうか。
日本が多くの国から入国制限をかけている中で、どうやって五輪をやるのかと思いますね。
津田 確かに、選手だけではなくてスタッフも含めると何万人という規模で人が来ますからね。
日本で感染爆発が起きたら誰が責任を取るんだという話になる。政治家は相変わらず「コロナに打ち勝つ五輪」みたいなことを言ってるけど。
西田 現役世代で「できる」って思ってる人、いるのかな。無理でしょ。
津田 世論調査では「できる」って意見が優勢です。
西田 誰だって「やめる」とは言い出しにくいから。世論が「オリンピックはできない」という空気になれば、政治家やIOC、五輪組織委員会だって「ならば致し方ない」となりますよ。
写真:長田洋平/アフロスポーツ

「一極集中」こそ東京の武器だ

津田 では、オリンピック開催は無理だという前提で、アフターコロナの東京をどうしていけばいいか考えていきたいと思います。
コロナ禍で東京一極集中の弊害が再び指摘されるようになり、最近では首都機能移転を含む地方分散の議論も活発になっています。