2020/7/20

【一休 社長】メガバンクで興奮した最先端の金融理論

Sakaki Jun
一休.com
高級ホテル・旅館やレストランの予約サービスを展開する一休は1998年に設立され、この分野の草分けとして成長。競合激化などにより一時低迷するも、ロイヤルカスタマーに特化し、ユーザーファーストを徹底することで、2012年から再び右肩上がりで業績を伸ばす。
それに一役買ったのは、2012年にコンサルティング会社から派遣され同社の経営に携わり、現在社長を務める榊淳氏だ。
メガバンク時代は金融工学を駆使し、デリバティブ取引などのプライシングを担い、その後、スタンフォード大学大学院でコンピューターサイエンスを学ぶ。ボストン コンサルティング グループを経て、経営コンサルタントとして出合ったのが、一休だ。
社長業は週1日。週4日はデータサイエンティストとして、データ分析やコーディングなど社員業に従事するという変わり種。いかに同社を再成長へと導いたのか。バックグラウンドを振り返りつつ、その独自の経営スタイルを紹介する。(全7回)

第一勧業銀行に入行

私がデータサイエンティストになったバックグラウンドについてお話ししておきましょう。
私は慶應義塾大学で応用数学を研究していました。大学院修了後の1996年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行しました。
榊 淳(さかき・じゅん)/一休 社長 兼 CEO
1972年熊本県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。スタンフォード大学大学院修士課程修了。2003年ボストン コンサルティング グループに入社。09年からアリックスパートナーズ。13年一休に入社。副社長COOを経て、16年2月から現職。
90年代の中盤ごろまでの日本の金融機関は、高度な数式や複雑な計算を必要とするデリバティブ取引などで、外資系投資銀行に後れを取っていました。
その状況を打破すべく、メガバンクなどが積極的に金融工学系の人材を採用し始めた時期と、私の大学院修了時期が重なりました。
当時、銀行の人材は経済学部や法学部など文系の人が大半で、理系の人間はほとんど採用していませんでした。
私は、理系専門職採用の2期生でした。同期300人のうち、私を含めた3人だけが専門職採用で、トレーディングの部署に配属になりました。