【解説4000字】なぜ10万円は、なかなか「もらえない」のか

2020/5/30
新型コロナウイルスの緊急経済対策として、全国民一律10万円の給付金のオンライン申請が5月1日から始まった。
給付金が盛り込まれた政府の緊急経済対策が4月7日に閣議決定された際に、最も注目されたのが現金給付の対象や給付のスピードだ。
1日に申請が始まったのは全国4割の自治体にとどまり、全国民がもらえるのは6月中旬以降になるとみられる。
給付額も「条件付き30万円」から「一律10万円」になるなど迷走した感は否めない。
元大蔵省官僚で、法政大経済学部教授(公共経済学)の小黒一正氏は、給付金をめぐる一連の動きについて「迅速かつ的確に給付ができなかった」と問題点を指摘する。その理由や解決策について解説してもらった。
小黒 一正(おぐろ・かずまさ)法政大学経済学部教授(公共経済学)
1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。1997年大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。

だから「支給が遅かった」

小黒 まずこういう緊急事態で最も求められるのは、いかにタイムリーに給付するかということ。一刻も早く困窮している人を助けなければなりません。
今回はこれだけ経済への打撃が出ているのにもかかわらず、まだ給付金を受け取ることができていない人が多いと思います。
遅すぎる。この時点で、相当問題だと思います。
米国と比べると、それがより際立ちます。同国は3月25日に上院議会で可決。そこから約2週間後の4月13日には、国民1人あたり1200ドル(約13万円)の配布が始まりました。
4月7日から5月25日の緊急事態宣言により、飲食店などは休業や時間短縮をするなど、さまざまな産業の活動が打撃を受けています。もともと収入が少なく、蓄えのない人などは死活問題になりかねません。
では、日本と米国でなぜここまで差が出てしまったのか。