#2【ノブコブ吉村×大室正志】サラリーマン芸人、意識高い系メディアに挑む

2020/5/22
新たに経済トークバラエティ「OFFRECO.」がスタート。毎回各分野の実践者や当事者、プロたちがゲストとして登場し、他では聞けない「ビジネスのここだけ話」を聞くことができる番組だ。

ホストをつとめるのは、平成ノブシコブシの吉村崇さん。西野亮廣さんや中田敦彦さんなど、いまや芸人もビジネスに乗り出す時代。果たして吉村さんはいまのお笑いの新たな波をどう捉えているのか。

番組でレギュラー解説を務める産業医の大室正志さんと、芸人とビジネスの関係性について考える。(全2回)

芸人もビジネスもチームワーク時代へ

大室 いまだと、同世代では吉村さんがいちばんの出世頭じゃないですか。
吉村 全くそんなことないですよ。そもそも僕は王道を歩んでなくて、邪道ですし。
大室 邪道とは?
吉村 面白いことを言って笑わせる、という芸人としてど真ん中のことをしているわけじゃないんです。石も投げられるし、すみません、すみませんと謝りながら笑いをとっているような。
大室 いまの話を聞いていると、どことなくサラリーマンの感覚がありますね。
いままでってサラリーマンが共感できちゃうような芸人ってあまりいなかったと思うんです。芸人とサラリーマンは対極にいた。
でも、いまの吉村さんは「上司がいたら仕方ないじゃん、あの人たち偉いし」みたいなサラリーマンみたいなことを言えちゃっている。
彼らに親近感をもたれる芸人かもしれないです。
──サラリーマンって上からの指示で人事異動とかもさせられますよね。
吉村 僕、めちゃくちゃ人事異動させられますよ。
コーナー回しやらされたかと思ったら、ひな壇に座らされたり。命令されたらそこに行く。
大室 さっきのお笑い戦国時代の話とつながってくるのですが、昔のプレジデントのようなビジネス雑誌を読んでいると、当時の起業家ってみんな自分のことを武将とか野球選手に例えるんですよ。
要するに縦社会で自分の役割をしっかりと果たすということ。
当時の芸人さんにも同じことが言えると思います。いかりや長介さんは野球でいうとあの選手で、とか。
吉村 ああ、確かに。
大室 でも、ひな壇芸人の場合、全員が4番バッターでもうまくいかない。相性がある。
そして、あのひな壇が生まれたころって、ビジネスもそうなっていたんですよ。
全員が全員トッププレイヤーである必要はなくて、相性のいい5人が集まってそこでプロジェクトが生まれる、みたいな。
いまのひな壇のパス回しの複雑性って、ビジネスだとプロジェクトベースで動くようなイメージです。
プロジェクトチームが生まれて納期までの間の仕事が始まる。そのときに、どれだけ経歴が立派でも相性が合わないと仕事がうまくいかないんですよね。
吉村 言われてみると納得というか、ビジネスと芸人ってこんな共通点があったんですね。
大室 だから変な話、一視聴者からすると「なんでこの人そんなに面白いこと言わないのにいつもいるんだろう」と思うような出演者がいるかもしれないけど、でもそれはキャスティングする側からしたら必ず意味があるとも言える。

空気を読んで「オンナ」呼びをやめた

大室 一視聴者としてみる限り、吉村さんってどんな大御所の人たちの番組でも、その場の空気で適応できるタイプなんですよね。
じゃあそういうタイプが自分でどうマネジメントしていくのか、というところですが。
世代的にサラリーマンに例えると、いまマネジメント側になる頃なんです。
吉村 ひょっとしたら大事な時期かもしれない。
──抽象的ですが、吉村さんはどう生きていきたいですか? いまって新たな戦乱の時代じゃないですか。
吉村 テレビでの成功が僕らが見ていた時代のような巨額な成功ではなくなったじゃないですか。だからそこだけで勝負できないし食っていけないだろうな、と。
でも僕個人として一騎打ちできる時代でもないし、やっぱり僕がタレントや芸人を何人送り出したかという数で勝負していくようになる気がします。
いろんな市場で、吉村印の城をどんどん増やしていくというか。
大室 プロデューサー的な立ち位置でいくんですね。
吉村 そうですね。正直、僕らって無茶できないんですよ、もう。
芸人って破天荒なイメージあるかもしれないけど、ネットで叩かれたりする時代だし、局からお金をもらっているから彼らの言うことを聞かないといけない。
そう考えると、堀江さんみたいな起業家の人たちって、自分でお金もってるから誰に何言われても「関係ねえよ」って言えちゃう。
芸人より攻めてるなって思っちゃいます。
第1回放送の収録風景
──吉村さんは自分で抑制しているな、という意識があるんですか。
吉村 ありますね。いろんな言動を整えている最中、という感じです。昔に比べたらかなり変わったと思いますよ。
たとえば、以前は別に蔑視する意識もなく、女性のことを「オンナ」って呼んでたんです。
でも、いまは同じことを言うと収録現場の空気がピキってなるんですよ。
あ、まずいんだなと思って色々と学んでいって、いまは「女性」呼びで統一したり。「バカだな」とかも言わなくなったし。
大室 たしかに抑制しているのかもしれないですが、いまの時代そういった柔軟な適応力は素晴らしいと思いますけどね。
吉村 ただ芸人としてはこじんまりとしてますけどね。
──大企業の社員さんみたいな感覚ですね。
吉村 本当はもっと攻めたい気持ちもありますよ。
子どものときにテレビを見て、財産があるから言いたいこと言えるんだと思ったんですよ。
だから、俺も好き勝手言うために財産作らないと、と思って仮想通貨を買ったこともあります。そしたら失敗しちゃって、誰よりも台本読む芸人になっちゃった(笑)
──YouTubeはやらないんですか?
吉村 団体では(ボーイレスク集団)「Butterfly Tokyo」という名前でやっていますけど、個人ではしていないし、無理ですね。
タレントの方が圧倒的に楽だと思ってしまう。自分で編集しないといけないし、人も呼ばないといけないし、プロデューサー的な役割もしないといけない。
それやっている人たちは本当にすごいな、と。
──この感覚も大企業社員と起業家の違いですね。起業家はお金の計算から何まで面倒臭いことをすべて自分でやらないといけない。
大室 吉村さんはスーパーサラリーマンですね。
吉村 僕、破天荒な芸人になろうと思ってこの業界入ってきたのに、結果スーパーサラリーマンだったんですね……。
──サラリーマンに愛される番組になる気がしてきました。
大室 精神科医の斎藤環先生という人が、人を大きくわけると「引きこもり系」と「自分探し系」の2パターンに分かれるといっています。
引きこもり系は世界観がしっかり固まっていて、作家でいうと村上春樹。
自分探し系はそのときの時代や人の刺激に合わせて中身を変えていけるタイプで、作家でいうと村上龍系。
彼は援助交際が流行ったら『ラブ&ポップ』を書いて、北朝鮮情勢が話題になったら『半島を出よ』を書いた。
吉村 そしたら、僕は確実に自分探し系だから、村上龍さんですね。つまり、次の番組はある意味「カンブリア宮殿」ですよ。
──楽しみです。
吉村 スーパーサラリーマンとして頑張ります!
経済トークバラエティ「OFFRECO.」第1回は、5/22(金)の22時より配信。

「起業家の本音と実態」と題し、ゲストに小泉文明氏(メルカリ会長)、明石ガクト氏(ワンメディア代表)、麻野耕司氏(People Tech Studios代表)らをお呼びし、起業家のリアルに迫ります。
番組視聴はこちら(タップで動画ルームに遷移します)。