#1【ノブコブ吉村×大室正志】同期のキンコン西野には、正直嫉妬しています

2020/5/21
新たに経済トークバラエティ「OFFRECO.」がスタート。毎回各分野の実践者や当事者、プロたちがゲストとして登場し、他では聞けない「ビジネスのここだけ話」を聞くことができる番組だ。

ホストをつとめるのは、平成ノブシコブシの吉村崇さん。
西野亮廣さんや中田敦彦さんなど、いまや芸人もビジネスに乗り出す時代。果たして吉村さんはいまのお笑いの新たな波をどう捉えているのか。

番組でレギュラー解説を務める産業医の大室正志さんと、芸人とビジネスの関係性について考える。(全2回)

ビジネスは僕にとって「恐怖のエリア」

──新番組「OFFRECO.」が始まるということで、今回は吉村さんと大室さんに対談していただくのですが、そもそも吉村さんはビジネスに興味がありますか?
吉村 興味、ないですよ。
──ないんですか(笑)。
吉村 いや、ないというか、素人が興味もっちゃいけないんだろうな、という方が正しいかもしれない。
気軽にビジネス興味ありますって言ったらそれだけで叩かれるような、ハードルの高いイメージがある。知識がないと近づいてはいけない恐怖のエリア。
でも、実は知りたい分野でもあって。
大室 だったら今回の番組をきっかけに学べますね。
吉村 本当に理解できますかね。
だって、過去にNewsPicksに出てる芸人の人たちって、あっちゃん(中田敦彦)とか、古坂さん(古坂大魔王)とか、すでにビジネスにかなり詳しい人たちばかりじゃないですか。
正直、僕は今まで出てきた芸人の中で一番頭悪い自信がありますよ。
だから、逆に僕を納得させられたら大したものだなって思います(笑)。
──ただ、吉村さんって「吉村崇、無人島を買う!ドリームチーム結成」(日本テレビ系)で無人島を買って開発プロジェクトに挑んだり、このコロナ禍にクラウドファンディングで芸人をリモート派遣する「吉村派遣会社」を始めたり、実は商才があるのではないかと感じるのですが。
吉村 いやいや、ネーミングを見たらわかりますけど、バカ丸出しじゃないですか?
僕は細かい段階を踏めないんですよ。「無人島買いたい」とか「会社作りたい」とかはできるけど、そこに計算があってやっているわけじゃない。
気持ちの根本は、ただ「いい飯食いたい」とか「いい車乗りたい」とか、それだけで。

芸人の禁じ手「滑ったことを言う」を使った

──ちなみに、お笑い芸人と起業家って少し似たところがあるように思いませんか。
起業家って、自分で一旗あげて、有名になって、上場したりする人がいる。お笑い芸人も、自分の体を張って、有名になって、テレビスターになっていく、というような、キャリアのあり方が通じる部分があるな、と。
大室 似てると思いますよ。
たとえば起業家は自分でリスクをとって自分の事業で上場するわけですが、芸人さんが冠番組を持つというのは、自分の名前が世の中に知れ渡ってある種法人のような状態になる。
これは上場のようなものですよ。
吉村 新聞のラテ欄(テレビ番組表)は上場の場所みたいなものなんですね。
大室 あれって日経の株価のようなものです。
吉村 そう考えると面白いかもしれない。ただ、僕って芸人としてはちょうど微妙な狭間の世代なんですよ。
大室 狭間ですか。
吉村 たとえば、僕よりひとつ上の世代は、学歴もないスポーツもできない、特技は何もないけど、お笑いで一旗あげようという最後の世代です。
僕からひとつ下の世代は、大学を出ていたり、大企業に勤めていたり、Jリーグに所属していたり、何か秀でたものをもっている。
──吉村さんは今年40歳ですよね。どういう差別化戦略で芸能界を生き残ってきたんですか。
吉村 基本行き当たりばったりでしたけど、結果論からすると、初めて滑ったことを堂々と言った芸人なのかなと思います。
大室 一般的に言ったら、芸人にとって禁じ手じゃないですか。
吉村 もちろん禁じ手です。滑ることを嫌がる職業だったのが、滑っても大丈夫だなと思わせたのは僕が初めの方なんじゃないかな、って勝手に思っているんですけど。

就職氷河期世代の芸人たち

大室 ただその一方で、吉村さんってどんなバラエティ番組に出ても、まとめてくれるようなイメージがある。
たとえば昔だと、村上ショージさんのような滑り芸と言われている人って、彼だけがいてもまとまらないじゃないですか。
吉村 大師匠なんでなんとも言えないんですけど……(笑)。
大室 滑ったことを告白しつつもまとめるっていうのが吉村さんの特徴的な部分で、これってたぶんひな壇という文化ができたことによる影響もあると思うんですよ。
ひな壇ができたことで、芸人たちが番組内でチームプレイ化していったじゃないですか。
吉村 そうですね。僕が小さいころに見ていたテレビとは今ってまるで違う。
当時はお笑い戦国時代という感じで、ダウンタウンさんやとんねるずさん、ウッチャンナンチャンさん、明石家さんまさん、北野武さんが勢ぞろいして、バチバチやっていた。
そこから平定して、我々みたいな芸人が生き延びていかないといけない、というときにバラエティがチームプレイになった印象です。
大室 チームプレイのテレビは平和ではありましたけど、それがまたマンネリ化して、いまYouTubeやAmazonといった黒船みたいな存在が現れている。
吉村さんは今そういった新時代の流れに対してどう思っていますか。
吉村 僕はちょんまげ側ですから。開国迫られてどうしよう、みたいな。
大室 いままでだったら、たとえばダウンタウンさんみたいな幕府のような存在に従う家臣であればよかったけど、今後その仕組み自体がなくなるかもしれない。
たとえばいま55歳くらいだったら逃げ切れるけど、吉村さんは世代的に逃げきれないじゃないですか。
吉村 逃げきれないです。もう死神の鎌が首元まできてますから。なんとか振りほどいていかないと、という感じ。
あと僕の世代って、超就職氷河期世代なんですよ。
どこも就職募集していないから、破れかぶれの人が多いというか。芸人やったり音楽やったり、起業家の人も多い。
大室 そこにさらに黒船がきて、自分たちのキャリアが脅かされていると。
吉村さんは、その黒船に近づいて新しいものを取り入れたいと思っていますか。それとも幕府側が落ち目だと思っていてもここで看取るぞ、と思っていますか。
吉村 どっちだろう。俺すぐ裏切るからなあ(笑)。
コロコロ変わるし、歴史には残らないタイプですよ。
大室 たとえばキングコングの西野さんとかって、いち早く新しい分野に足を踏み入れて、幕府側から「あいつ何やってんだ」って思われたような人じゃないですか。
吉村 そうですね、しかも彼は僕と同期です。
大室 そういう同期に対して、吉村さんはどう感じますか。
吉村 嫉妬はありますよね。西野くんって、僕らの期で一番早くに売れたんですよ。
だからもう俺ら他の芸人は売れないって言われていた。あんたらいらないよって言われていた世代が、僕とか山ちゃん(山里亮太)、村本(村本大輔)とかオードリーとかで、なんかみんな変にこじれてるんですよね。
西野くんは、だからもう当時から嗅覚が強いな、と思っていて。
売れるのも早かったし、その後の転身も早かった。違うところでちゃんと成功しているわけですから、そりゃ嫉妬しますよね。
その嫉妬のやり場がなくて、「芸人なのにそんなことしてんじゃねえよ」みたいな言い方しちゃいますけど、やっぱり心のどこかで認めてますよね。悔しいけど。
経済トークバラエティ「OFFRECO.」第1回は、5/22(金)の22時より配信。

「起業家の本音と実態」と題し、ゲストに小泉文明氏(メルカリ会長)、明石ガクト氏(ワンメディア代表)、麻野耕司氏(People Tech Studios代表)らをお呼びし、起業家のリアルに迫ります。
番組視聴はこちら(タップで動画ルームに遷移します)。