新型コロナ治療薬を探すドクターが頼る「AIの力」

2020/5/8

有望な治療薬を2日で特定

1月下旬、ロンドンに拠点を置く人工知能(AI)スタートアップ企業「ベネボレントAI(BenevolentAI)」は、新型コロナウイルスの問題に着目した。
彼らは同ウイルスに関連のある科学文献をくまなく調べられる技術を駆使して、それから2日以内に見込みのある治療薬を特定。この薬のメーカーや、長年それが他のウイルスの治療にどう役立つかを研究してきた多くの医師たちを驚かせた。
問題の薬は、関節リウマチの治療薬として開発された「バリシチニブ」。新型コロナウイルスの治療薬として使える可能性についてはまだ多くの疑問が残っているが、近く米国立衛生研究所(NIH)との協力の下で臨床試験が行われる予定だ。カナダやイタリアをはじめとする他の複数の国でも、同薬についての研究が進められている。
今、ベネボレントAIの研究者をはじめ、世界中のAI研究者やデータ科学者たちが、新型コロナウイルスに注目している。感染経路の調査や感染者の治療、ワクチン開発などの取り組みを、AIの力で加速させたいと考えているのだ。
今回のパンデミック以前、テック業界の中で最も勢いがあり、かつ潤沢な資金に恵まれているAIセクターでは、研究者たちが自動運転車や機械学習といったビジョンを追求してきた。
だが今は、単純に人の役に立ちたいという思いから、人間に代わるテクノロジーではなく、人間の専門家を支援するためのテクノロジーの実現に取り組んでいる。
(Scott Gelber/Getty Images)

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