楽天、PCR検査キットの販売見合わせ 急遽方針転換
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楽天から、一般企業向けに発売されようとされていた新型コロナウイルスのPCR検査キットが販売見合わせになりました。
このキットの販売は医療者のなかでは問題視されていたので妥当な判断だと思われます。
PCR検査自体の問題ではありません。
一般に妥当性がはっきりしないキットを、採取方法もその後の対応も考えずに使用されると、無理がある、もしくは混乱が大きくなるからです。
もともと、PCR検査は絶対的なものではなく、『偽陰性』が多いこと、しかも『採取方法によって偽陰性が多くなる』ことがわかっています。
たとえば、陽性とわかっているひとに対し痰で検体を採取した場合は76.9%、喉で採取した場合は44.2%しかPCR検査で陽性とならないという報告もあります(※1)。
(※1)Lin C, et al. medRxiv 2020:2020.02.21.20026187.
https://pediatric-allergy.com/2020/02/28/sars-cov-2/
実際に検体を採取する場合は、綿棒を鼻のかなり深くまで差し入れる必要があります(※2)。
(※2)N Engl J Med 2020.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMvcm2010260?query=featured_coronavirus
そこまでやっても、『きちんとした(妥当性があるといいます)PCRキットですら』7割しか陽性になりません。
楽天のキットは、その妥当性もとれていませんし、訓練されていない採取方法では偽陰性がとても多くなるでしょう。
さらに、偽陽性の問題もあります。本当は新型コロナではないのに、コロナの濡れ衣を被せられる可能性も指摘できます。
今後、PCR検査がスムーズに実施できるような体制を整えていかなければならないことは確かです。より多く実施できるようになるべきでしょう。その実施がまだまだ不十分であることがこのようなキットの販売につながったことは否めません。
ただ、PCR検査をこのような市販キットで実施することが正当化されるものでもないと思われます。
今後、必要なひとに検査を行える状況・体制の整備を望みます。直接的な原因は経歴詐称問題なのかもですが、
結果として物議を醸していた検査キット販売が中止となり、医療界としては一安心。
とはいえ、なにかしら役に立てることを、という三木谷さんの正義感が根本にあると信じて、現実に則した方針転換に期待したいです。原因が何だったにせよ、初期のプランに固執せず、様々な意見を聞き入れ、方針転換できることは良いことと思います。
第三者の評価を受けていない独自の検査キットを投入され、世の中が、そして医療現場が混乱に陥る可能性もありましたが、医療現場で働く者としては安心しました。