【NEC副社長】大企業こそ、コロナ時代に変革ができる

2020/4/16
新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本でテレワークが急速に広がっている。
特に政府が「緊急事態宣言」を4月7日に発令してからは、首都圏などに事業所を持つ企業を中心に、出勤を控えるようになった。これは経済には大きなダメージを与える一方で、変革を促すチャンスでもある。
今回の危機では、日本人の働き方、日本企業の組織の在り方が大きく変わりそうだ。
アフターコロナを見据え、今できる企業変革をやり遂げた企業が、次の時代に勝ち上がるのではないか。そんな中、制度や風土などが「日本の大企業」の典型とされるNECの取り組みに注目した。
同社は2018年4月、日本GE(現GEジャパン)社長などを務めてきたプロ経営者、熊谷昭彦氏を副社長として招聘(しょうへい)した。企業改革が遅いといわれてきた同社も、経営の中枢に外の血を取り入れるという大胆な人事に踏み切った。
そこで今回、海外事業を中心に企革の旗振り役を担う熊谷氏に、危機の中であらゆる企業ができる変革、それに必要なリーダーシップについて聞いた。

上司も部下も成長のチャンス

──欧米など世界各地で経済も生活も混乱しています。海外担当のリーダーとして心がけていることはなんですか。
当社でもロックダウンしている(欧米などの)地域では、社員が自宅の外に出られない状況です。ということは、お客さんのところにも行けない。つまり、営業ができない、ということになります。それは、今日や明日の数字には響きませんけども、ボディブローとして必ず経営に響いてきますよね。
こういう危機では、世界中がパニックになっているし、日々さまざまな情報が飛び交っています。リーダーは現場の社員がパニックに陥ってしまわないよう、冷静であるべきなのは当然ですが、判断が遅れてもいけません。
ただ、どっちの判断が本当の正解なのか分からない状況にあります。そこで重要なのは、自分なりの判断の基準を持つことです。
私の場合、社員と社員の家族の安全ですね。もちろん、ビジネスは重要だし、特に混乱が拡大した3月は期末ですので、数字(売り上げ)を出すのが重要な時期でもあります。
当然のことながら、お客さんも大切だけども、社員の安全を犠牲にしてはいけません。例えば、後になって、(十分な顧客対応をしなかったことで)お客さんから怒られたとしても、それは「私の判断なので私が責任をとる」と、リーダーが言い切ることが大事だと思いますね。
一方、基本的に仕事のやり方はそれぞれに任せています。自分が置かれている環境は本人が一番よく分かっているので、自分で何ができるかをそれぞれ判断してもらうようにしています。
──社員に自立心が生まれるきっかけになるかもしれませんね。
いいチャンスだと思います。
テレワーク一つをとっても、基本的に自分1人で作業する場合が多いから、自分で判断して行動しなければなりません。隣に上司は座っていないので、アドバイスもくれません。したがって必然的に自分自身にオーナーシップ(当事者意識)がつきますよね。