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【出口治明】小説『一九八四年』は、なぜ今でも本質的なのか?

NewsPicks編集部
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    静岡県立大学国際関係学部 准教授

    『一九八四年』の世界でまず前提となるのは、核戦争で荒廃した世界であるということですね。核戦争後の窮乏した世界であることが、監視、洗脳、拷問、歴史改竄による人間の徹底した統制を正当化します。この小説が書かれたのが1949年という冷戦の初期であったことが、この設定にリアリティを持たせました。オーウェルの死の前年であり、闘病中に書かれました。
     この小説で最も重要な道具立ては、「テレスクリーン」と呼ばれる双方向テレビです。教育や拷問、洗脳といった古典的な方法も使われますが、統制に最も有効であるのは、このテレビに他なりません。どの人間の行動も発言もすべて記録されており、いわばビッグデータが常に精査される世界です。問題があると「愛情省」に監禁され、矯正されます。
     核戦争はともかく、情報通信技術と情報科学の発展の末に実現される社会のあり方としては、現代はますますこの小説に近づいているように思われます。
     オーウェルが全体主義を嫌悪するようになった原体験は、1930年代のスペイン内戦への義勇兵としての参加でした。そこで、共産党が、味方であるはずの他の共産主義者のグループを、殺害や脅迫、様々な手段でひたすら統制しようとするのを目の当たりにしました。その体験は、『カタロニア賛歌』『動物農場』で表現されました。その後、第二次世界大戦で起きたことが、全体主義についての危機感をさらに増大させました。
     予言は常に現在への批評です。オーウェルは、その感性で21世紀の世界を予言したともいえますが、1930年代からすでに起きていた、人間を統制せずにはおかない、近代社会のある一面についての危機感を表現しました。


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    ジョーシス株式会社 シニアエコノミスト

    これは音声でも聞いて欲しい。文字に反映しきれない、言い回しや空気感を通じて、出口さんによる読書感が一層生き生きつ伝わってくる。出口さんは優しい語り口にもかかわらず、鋭い政治社会分析を展開。それにしても野村さんの声、音声コンテンツ向き(笑)

    ビジネスパーソンこそ持つべき、歴史観、世界観、国家観。そのあたりが凝縮されています。22分すぎあたりの「敵を作る」あたりと、23分ごろからの子供時代の風景と伝統意識が結び付きナショナリズムを作り出す、この辺は特に。アンダーソン「想像の共同体」なども引用していて、知的に刺激を受けました。

    「想像の共同体」は、大学で最初に本格的に呼んだナショナリズム論。それに対する批判や修正の議論はあるものの、ナショナリズム、国家、国民、共同体、時代の記憶、といったあたりを語るには必須の書籍。インドネシアの話し。「想像の共同体」を日本語で読むなら『定本 想像の共同体: ナショナリズムの起源と流行』、白石隆・白石さや訳、書籍工房早山、2007年が良いと思う。

    あわせて故・土屋健治先生の「カルティニの風景」(めこん)もオススメ。若くして亡くなった土屋先生の、いつまでも語り継がれる金字塔とも言える著作。

    「カルティニの風景」が描き出す、宗主国たるオランダと植民地の蘭領東インドの間で形成される、ナショナリズムとは何か。『一九八四』と、自分が呼んできた本の内容が絡み合い、知的な刺激を受けました。

    アンダーソンといえば、Under Three Flags: Anarchism and the Anti-colonial Imaginationも刺激を受けた本。日本語版は読んでいませんが、山本信人先生による訳がある。山本先生による訳なら大丈夫でしょう。『三つの旗のもとに――アナーキズムと反植民地主義的想像力』という邦題。

    プラス、やはり、忘れられないのが加藤剛先生訳の「ヤシガラの外へ」というアンダーソンの著作。学術書というよりも、エッセイに近い内容で読みやすい。訳者の加藤先生は、恐らく、日本で最もアンダーソンの思考回路を理解している先生かと思われます。


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    Podcast Studio Chronicle 代表

    現代の「知の巨人」出口治明さんに『1984年』を語っていただきました。ちなみに出口さんは、本書を数十年前に読み、それ以来一度も読み返していないそうです。しかしインタビュー中には、細部に到るまで(固有名詞も)全て記憶されていました。お話内容ももちろんですが、その記憶力に驚愕しました。


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