【追悼・中村哲】「アフガンの英雄」が、現地で見たもの
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現在は紛争地で支援を行うNGOの活動がどんどん困難になっています。米国や日本が紛争地から手を引こうとしているということもありますが、何より、現地の武装勢力の攻撃対象になるからです。
先進国からやってきた人々の「善意」は、多くの武装勢力によって「侵略」の一形態として理解されています。多くのNGOは、単に食べ物やテントを届けるだけではなく、現地の社会を根本から変えなければ紛争も貧困も無くならないと考え、社会をつくり変えたり、現地人の価値観を「リベラル」に変えることを試みます。キリスト教系の団体(特に米国や韓国の)であれば、キリスト教徒を増やすことが最大の「善意」であると本気で考えているところもあります。
そして、これまでの国連や欧米の援助機関、NGOによる支援が、(もちろん様々ですが)現地であまり評価されていない、ということがあります。欧米や日本からやって来た人々は、彼らのメディアの素材になるような感動や自己実現のストーリーにしか関心がない、「机上の空論」に基づいた計画でしかなく、短期間関心を持ってそういうストーリーの映像を撮ったら去ってしまう、紛争も生活も悪化するばかりで何もありがたいことはない、ということが広く知れ渡ってしまっています。
遠い外国の人たちのことなど、現地に10年も20年も住んで、毎日顔をつき合わせて話し合わなければ、何もわかりません。支援がどうとか、ましてや社会を変えるなどという話は、本来その後にやるべきことです。中村氏は、それをやった人です。そういうことをやるNGOは、非常に稀です。
中村氏は、明治以来続く九州キリスト教の伝統の系譜の上にいた人です。父親は戦前、大学を出てから労働組合の活動で治安維持法で捕まった人で、その後は港湾の荷役労働者の世話役をやっていた人です。苦境にあって戦争などしていた人たちにつきあうのは、まことにしんどいことです。何十年も現地でつきあっても中村氏のように殺されたりもします。損得を顧みず、我が身を捨てるだけの芯が無ければできないことでしょう。アフガニスタンという、政情不安の地域で現地に根ざして活動し、生涯を捧げた中村哲さん。アフガンは2000年の米国同時多発テロ事件(9.11事件)以降、米国の攻撃が行われ、報道が一気に増え、そして最近は随分と減りました。その以前から活動していた中村さんの著作は貴重。
NewsPicksでは、中村哲さんと親交のある元在アフガニスタン高橋博史大使へのインタビュー記事を掲載したことがあります。中村さんが日本人の伝統的な知恵を活用して考案した灌漑を二人三脚で実現し、アフガンに緑をもたらしたエピソード。
本日の「10分読書」、中村さんの本とあわせて、下記も是非ご覧下さい。
「日本の伝統技術でアフガンの砂漠を緑に」
https://newspicks.com/news/1503468
「日本大使か語る最新のアフガン情勢」
https://newspicks.com/news/1504699