ハンセン病補償法が成立 家族に最大180万円
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ハンセン病は、結核菌の家族、Mycobacterium lepraeという菌による感染症です。無治療の患者さんとの頻繁の接触により感染が起こると言われていますが、その感染力は弱く、また感染しても多くの方が病気を発症しない、比較的穏やかな菌です。
しかし、一度発症し進行すると、皮膚や神経に症状を出し、外見に影響が出るため、人々におそれられ、あるいは呪いなどと捉えられて、隔離政策や差別にもつながってしまいました。
感染力が低いと十分認識され、根治療法が存在するいま、患者数は極端に減少し、それは無関心へと変遷しつつあります。根治して感染する可能性が全くない元患者さんたちは、歴史的な深い隔たりから、人と離れた療養所で生活をされている方が数多くいます。つまり、この話はすでに終わった「過去」についてではなく、現在進行形です。
私も療養所に神輿を担ぎに行ったり、お話を伺いにいったことがありますが、患者さんが当時のことをとても冷静に話されていたのが印象的でした。私には想像もできないほどの苦しみや悲しみがあったはずで、もしかするとそれは今もそうなのかもしれません。これは、金銭や謝罪では決して解決することのないものですが、そのような傷が少しでも埋まることにつながれば、と願います。熊本地裁で違憲判決が出たのは2001年5月でした。そして小泉純一郎首相が「控訴せず」の大英断を下し、ハンセン病の元患者たちへの補償の道が開ました。それから18年もかかったことは残念ですが、安倍首相が直接面会して謝罪するなど、人権尊重の意義と意味が再確認されました。この経緯をきちんと踏まえたうえで、人権への決意を後世につないでいくことが必要です。他にも旧優生保護法下の強制手術など無知と無理解によって続いてきた人権侵害があります。常に問いかけを続けていないと人権侵害はまた生まれます。
2001年、初めて国の責任を認める熊本地裁判決の報道を記者として担当していました。18年余かけて、ようやく家族まで含めての補償制度が成立したわけですが、補償=問題の解決、一区切りではもちろんなく、むしろ差別の解消という、ものすごく重い時間のかかる宿題が後に残されていることを改めて心に刻みたいと思います。