なぜ「職場の問題」は解決できないのか
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私の本の出版に合わせたインタビュー第2回目です。
前回は、依存症としての今日の企業社会についてお話をしましたが、今回は、私たちが「ノウハウ依存症」へと陥ってしまう、組織の中の複雑で既存の解決策ではどうにもならない、適応課題について考えています。
リーダーシップ研究者のハイフェッツは、問題状況を技術的問題と適応課題に分けました。技術的問題は既存のノウハウが通用する問題ですが、適応課題はそうしたことを試しても、問題の相手がうまく動いてくれないなど、もっと複雑な問題です。多くの組織における困難な問題は、この適応課題だと言えます。
本では、適応課題を乗り越えていくためには、準備ー観察ー解釈ー介入の4つの段階が必要だと述べています。そして、まずそれが技術的問題解決では乗り越えられないことを受け入れること(準備)と、その相手が動いてくれなかったり、困ったことをすると言った問題が一体どういう状況の中で生じてきたのか、それを知ること(観察)が特に日本の組織の中で出来ていないことを指摘しています。
適応課題を乗り越えるためには、まずその問題が何なのか、なぜ生じているのか、生じているだけの必然性があることをよく知らなければなりません。
しかし、多くの場合、この観察をせずに、すぐに既存の解決策を探してしまいます。なぜならば、問題を生み出す相手について、わかっていないことがわかっていないからです。
この「わかりあえなさ」から始めるためには、様々に自分のナラティヴとは違ったナラティヴから問題を語り直してみる試行錯誤が不可欠です。
この記事では、精神障がいケアのコミュニティ「べてるの家」で行っている「主観・反転・非常識」をご紹介しています。
ナラティヴ・アプローチは、こうして、わかりあえなさから問題に挑むことを始めて、既存の解決方法とは違う、ユニークな解決方法を模索していくアプローチなのです。
私の本の中では、具体的なエピソードを元に、こうしたわかりあえなさを生かしていくことの大切さ、有用さについて述べています。
わかりあえなさこそが、私たちの組織社会における隠されたリソース、財産であり、これにもっと向き合っていく、生かしていくことは、巨大な鉱脈を掘り起こすに等しいほどの大きな価値がある取り組みであると思います。
ぜひご一読いただければ幸いです。読み入りました。手段が目的化しがちな「人事担当」には耳が痛い話です。よう聞いとけよ、と思ってしまいました。自戒の念を込めて。
今の仕事の中でワタシは、組織内の信頼関係を構築するプロセスとして「自己理解・他者理解・他者受容」を説いてきたのですが、この「他者と働く」にある「技術的課題と適応課題の分離」「準備・観察・解釈・介入」という概念で、より整理することができました。実にわかりやすい。これからはこちらでアプローチさせて頂くことにしますw
また「主観・反転・非常識」も初めて耳にしましたが、とても有用に感じます。チャレンジしたいです。「わかりあえない状況」は絶望するものではなく、前提。
↓ これいいなあ。
「職場の話に戻すと、部下の離職が激しいとか、モチベーションが低いという場合、一度反転させて、もっとモチベーションを下げるにはどうすべきか、くらいのことを一度考えてみる」
「問題をすぐに解決しようとする癖をやめるというのはすごく大事なことです」