なぜ「職場の問題」は解決できないのか

2019/10/5
NewsPicksパブリッシングから『他者と働く――「わかりあえなさ」から始める組織論』を上梓した、経営学者・宇田川元一氏のインタビュー。第2回では、既存の方法では解決が難しい職場における「適応課題」について掘り下げる。

「技術的課題」と「適応課題」

──宇田川さんは著書の中で、ロナルド・A・ハイフェッツが定義した「適応課題」という言葉をキーワードに据えていますね。
宇田川 ハイフェッツは、ハーバード・ケネディ・スクールで、25年にわたりリーダーシップ論の教鞭(きょうべん)を執ってきた人間です。
彼は、既存の方法で解決できる問題のことを「技術的問題」、既存の方法では一方的に解決ができない複雑で困難な問題のことを「適応課題」と述べました。
例えば、「上司がわかってくれない」「部下に話が通じない」「隣の部署の協力が得られない」……。会社の中で、こういったフラストレーションを抱いたり、耳にしたりする機会は少なくないのではないでしょうか。
このような状況下には「適応課題」が横たわっていると考えてよいでしょう。
宇田川元一/埼玉大学経済経営系大学院准教授。1977年東京都生まれ。 2006年早稲田大学アジア太平洋研究センター助手、2007年長崎大学経済学部講師・准教授、2010年西南学院大学商学部准教授を経て、2016年から現職。 専門は経営戦略論、組織論。 イノベーティブな企業組織をいかに創っていくかについて、新たな物事を生み出す人々・組織の生成にフォーカスしながら研究を行っている。理論的な基盤は、主に社会構成主義に基づくナラティヴ・アプローチなど。 2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。