【ハワード・シュルツ】「利益と良心」の難しいバランスを取る
利用者は、お洒落な店構えとカスタマイズできる飲み物に意識が集中しがちだが、ハワード・シュルツCEO(2019年6月に退任)は、店員と客が誇らしく思えるためのイノベーションに力を入れてきたという。
シュルツはインタビューが行われる数日前に、2020年米大統領選への出馬意欲を表明したが、今年9月、正式に出馬取りやめを発表している(インタビューが行われたのは18年1月31日)。
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利他と自利のバランスは経営の恒常的な課題です。良し悪しの基準が優先されると、資本主義の論理を凌駕する可能性が高まります。一方で、きちんと足元を固めないと、つまり短期的利益を生む工夫を続けないと、経営自体がサステナブルでなくなり、結果的に顧客や従業員を裏切ることになります。このバランスを取るためのハワード・シュルツの実践的な考え方が印象的でした。
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私は長年、取締役会や管理職の定例会議に出席してきましたが、そのたびに2つの椅子を思い浮かべます。
そして一方は顧客、もう一方はスターバックスのパートナーが座っていることを想像します。
そして、「この決定、この戦略、あるいは今話し合っていることは、顧客とパートナーを誇らしく思わせるだろうか」と考えるのです。
非常にシンプルなリトマス試験紙で、もしその答えが、わずかでもグレーだったら、その議論は間違っていることになります。
昨日のストーリーの続きが語られている。このあたりのエピソードは、必ず自分の経営戦略論の講義で受講者に話す内容だ。
シュルツは貧しいユダヤ系の家の出身であり、そのことを踏まえると、またここで語られていることも重みがある。
「社会に見下され、あるいは見向きもされない環境の出身者でも、この会社のエントランスに足を踏み入れれば、自分の価値を感じられるような会社、お互いをリスペクトできるような会社を構築したいと思いました。」
スターバックスは人と人の善いつながりを提供する場を目指したわけだが、何を善いとするかが、その会社の基盤としてのナラティヴである。
しかし、決して忘れてはならないのは、1992年の株式上場から15年間で100倍に成長した頃、シュルツは一線を引いていたが、経営危機を迎えるということである。
企業(に限らず組織全般)は、変わりゆく環境に適応しなければ生き延びることはできない。しかし、環境に適応することが、かえって組織を危機的な状況に招くこともある。
その時に何を守るべきだろうか。それは、私は基盤としてのナラティヴではないかと思うのだ。では、それはいかにして可能だろうか。
それこそが、スタートアップ企業が数多く育ってきている日本の企業社会にとって大きな学びになるはずである。
顧客視点で物事を考え、決断する。そのいっぽうで、従業員などのパートナー視点でも最善策を考え、決断する。
創業間もない頃に日記に記した言葉。それは「利益と良心の難しいバランスを取る」。その意味は、「良心、社会的インパクト、そして慈しみはみな、人間を中心に据えた要因です。そして成功は、人とシェアしてこそ素晴らしいものになる」。すばらしい。
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