JTB 過去最大の赤字 ネット予約対応へ改革急ぐ
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記事より
「インターネットを使った旅行の予約などが広がる中、会社は改革を急ぐ方針です。」って…。
日本でインターネットのホテル予約が登場してるのは、Windows95の発売と、ほぼ同時期、1996年スタートの、日立造船の孫会社の、日立造船情報システムによる「ホテルの窓口」です。もう、約25年ほど前の話で、日本のインターネット一般化の黎明期です。
スナフキンのキャラクターを覚えている方はいるでしょうか?
当時、ブラウザーはモザイクとかネットスケープとかの時代ですが。
その後、「ホテルの窓口」は、ホテルのみでなく旅の総合予約サイト目指して、「旅の窓口」にリニューアル。
それを、楽天が、323億円で買収したのが、2003年。
私は、2000年に立ち上がった「じゃらんネット」の運営をやっていたため、この買収劇には大きなショックを受けました。(社会人2年目の単なる新人社員だったけど、地道なサービス改善に必死だったのに、こーゆー形で、ゲーム形勢がひっくり返るんだ、、と。また、三木谷さんのリーダーシップによる大胆な買収金額にも大きなインパクトを与えられました。)
えーと、つまり何が言いたいかというと、もう「インターネットを使った旅行が広がる」なんてフェーズではないんです。
四半世紀、経ってるので。
ネットでのECはまず最初に、リアルで買ってもネットで買っても差がないものや、むしろネットの方が優位性があるものから広がります。
・旅行ーカウンターで買っても実際に旅館や食事を見られるわけではない。パンフで写真で選ぶなら、写真豊富、口コミ豊富、ダイナミックプライシング、リアルタイムで空きがわかるネットが有利。
・保険ー同じく、リアルで買っても、リアリティがあるわけではない。
・本ーどの本屋で買ってもクオリティ同じ。品揃えやレビューでネットが有利、など。
やがてECが成熟してくると、「洋服」「食品」など、リアルの方が有利なものも、ECに入ってきます。
えーと、つまり何が言いたいかというと、「い、今さらだよーー」と。
こうなったら、リアルからネットを徹底的にやるしかありません。
世界ではネットの王者はリアル参入している。
Amazonのホールフーズ買収とか、
WeChat運営するテンセントのMobike資本提携とか。
しかし、大幅な経営陣刷新が必要かもですが。こういうタイトルのつけ方だとつい反射的にネット時代にトラベルエージェントは時代遅れ、とかその類の話題になりがちですが、今回の決算に限って言えば赤字の原因はJTBが2013年に買収したブラジル子会社Alatur JTB Viagens e Turismo S.Aの不振による減損によるものです。
ネット絡みでは、ダイナミックプライシングに対応した新システムに更新する為、システムの減損を行ったことも関係していますが、別に予約システムそのものがネットに対応していないわけではなく、又ネットに押されてリアルの収益力が落ちたわけでもありません。
むしろ売上高も営業利益も増えています。
大手トラベルエージェントとは巨大な商社のようなものであり、表には出なくても、どのサイトで買おうがチケットはこうしたエージェントを通過することが多いので、長期的にはともかく短期的には表面的なIT化の遅れだけで収益を語ることはできないのです。
JTBとしての問題は、そういう目先のことにあるわけではなく、インバウンド観光も増え、国際的な旅行熱も高まっているにもかかわらず、肝心のグローバル事業が軌道に乗っていない点にあります。
実際ブラジルだけでなくアジアでも採算が悪化しています。
IT化の遅れなど素人目にも分かりやすいところに目が行きがちですが、JTBだけでなく日本企業に共通するのは、国内マーケットが先細りするにもかかわらずグローバル化が必ずしもうまくいっていないことです。
タイトルとは裏腹に、数字の面から今回の決算から見て取れるのは、グローバル戦略の見直しが必要だということに他なりません。JTBに従事していた身としては、「JTB 過去最大の赤字 ネット予約対応へ改革急ぐ」というタイトルに違和感があります。また、加藤 史子さんの「ネットを徹底的にやるしかない」という意見にも同意しかねます。ごめんなさい。
今決算は、営業赤字ではなく減損によるものです。一部は既存のシステムを捨ててまで新たにシステム投資をした結果です。
私がいた1994年以降にも、既にネット時代を見据えてシステム関連に200億円以上を投じています。しかし、それらの投資が実を結んでいないのが現状です。
今後は、レッドオーシャン化した利益率の低いネットの世界より、JTBが長年培ってきたヒト、モノ、カネ、情報が必要なTV(テクニカル・ビジット)等、*JTB『ビジネスソリューション領域』に資源を集中することが肝要だと思います。
私が入社した1983年当時で、すでに取扱額1兆4千億円の名実共に世界一の旅行会社でしたが、今後はいかにしてダウンサイジングしながら利益を生み出すかが、今後の経営の課題だと思います。