(ブルームバーグ): パナソニックと米電気自動車(EV)メーカーのテスラとの関係に市場が神経を尖らせている。ネバダ州のリチウムイオン電池工場「ギガファクトリー」の共同運営を巡り、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が不満を表明したからだ。業績への影響を懸念する声も上がっている。

関係悪化は思わぬ形で現れた。両社がギガファクトリーの拡張投資を凍結すると11日に日本経済新聞が伝えると、13日にはマスクCEOが、パナソニックの低い生産能力が「モデル3」生産の制約要因になっているとツイート。それを受けパナソニックが現状を細かく説明する一幕もあった。

パナソニックの津賀一宏社長はテスラとの関係を「一蓮托生」と表現したこともあるが、米国モーニングスターの伊藤和典アナリストは、「パナソニックが距離を置き始めているのは明らかだ」と指摘。思ったように利益が出ていないため「線を引いている。そこにマスク氏の不満が出ている」と分析する。

両社は2014年7月に協業開始を発表。ギガファクトリーはテスラが管理しているが、モデル3に搭載する円筒型リチウムイオン電池を製造する責任はパナソニックにある。当初の目標は20年までに年間35ギガワット時相当の生産だった。約40万台分のモデル3に十分な量だ。

しかし、テスラの1-3月期の世界販売は6万3000台で、前の四半期の9万1000台から減少した。マスク氏のツイートに対してパナソニックは15日、ギガファクトリーでは18年度内に35ギガワット時相当の生産体制を確立しフル生産に向け立ち上げており、今後の投資はテスラ社と連携しながら需要を見極め検討すると説明した。

ロス・キャピタルのアナリスト、クレイグ・アーウィン氏は、両社のやり取りについて「テスラとパナソニックには、ただちに夫婦関係のカウンセリングが必要だ」と指摘。その上で、両社は「かなり険悪な関係にあるようだ」と述べた。

パナソニックはギガファクトリーに2000億円超を投資し電池を独占供給してきたが、2018年10-12月期の電池事業を含む自動車関連部門の営業利益率は3.4%と他部門より低い。津賀社長は12年の社長就任以来、同部門を新たな収益の柱と位置付けるが、実現に時間がかかっている。今年1月にはトヨタ自動車と共同でEV向け電池の新会社を2020年末までに設立すると発表した。

一方、関係者によると、テスラも中国の新工場での生産に関連して、中国EV電池トップの寧徳時代新能源科技(CATL)と協議している。

モーニングスターの伊藤氏は、テスラが新たな供給者を見つければ、中長期的にパナソニックに「コストダウン要求が出てくる」可能性があり、収益性悪化も懸念されると言う。ただ、テスラが求める供給体制の構築は一朝一夕にはいかず、当面の供給者はパナソニックに限られるため「短期的な影響は考えていない」と分析した。

--取材協力:Pavel Alpeyev、Dana Hull.

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