【早崎公威】なぜ、初のブラックホール撮影が「歴史的偉業」なのか

2019/4/11

"想像上の天体"を初めて確認

巨大ブラックホールの実態解明が大きく前進したーー。
アメリカ国立科学財団(NSF※1)が10日、国際的な電波望遠鏡のプロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」を通して、巨大ブラックホールの「影」を発見したと発表した。
対象は、「おとめ座M87」という我々の住む天の川銀河とは異なる銀河の中心に位置する超巨大ブラックホールだけに、物理学と天文学分野の双方に与えるインパクトはとても大きく、今後のブラックホールサイエンスの方向性を決定づけたと言っても過言ではない。
言うなれば、「想像上の天体が現実の天体として人類の目に初めて直接認識された」のである。
また、NSFや日本の国立天文台を始め世界同時に6カ所で記者会見が開かれたことからも、EHTプロジェクトは真に国際的な研究プロジェクトであることがうかがえる。会見の様子から、今回のターゲットである「おとめ座M87」の超巨大ブラックホールの撮像に対しては日本人研究者達の多大な貢献がうかがえた。
なぜそのような大きなインパクトがあるのか、その発見に至るまでにどのようなストーリーがあったのか。EHTプロジェクトで中心的な役割を果たした2人の日本人研究者への直接取材とともに解説するので楽しみにしてほしい。(※参考文献と脚注は末尾)
早崎公威(はやさき・きみたけ)忠北大学天文宇宙科学科准教授
北海道大学卒(Ph.D)宇宙物理学者。専門はブラックホール宇宙物理学・天文学(理論)。京都大学基礎物理学研究所研究員、韓国天文研究院フェローを経て、現在、韓国国立忠北大学天文学・宇宙科学科准教授、ブラックホール宇宙物理学研究室主宰。この間、ハーバード大学ハーバード・スミソニアン天体物理研究所客員研究員/エクセター大学(イギリス)客員助教授/中国科学院客員研究員/北海道大学トポロジー理工学客員准教授を兼任。2018年1月から天文学・宇宙物理学専門ジャーナルJKAS科学編集委員(Scientific editor)に就任

ブラックホール解明の歴史

今回の発見は、地球から5500万光年(※2)離れた「おとめ座M87」という銀河の中心に存在する太陽質量(※3)の65億倍の質量を持つ超巨大ブラックホールの影を捉えたというものだ。
ブラックホールという言葉は、誰もが聞いたことがある言葉だろう。