【藤本あゆみ】私のモットーは「タフにしなやかに生きる」

2019/2/16
様々な企業の「 働き方事例 」を共有・研究・体系化に取り組む、一般社団法人at Will Work代表理事として活躍中の藤本あゆみさん。
at Will Workで働き方に関するカンファレンスなどを主催しつつ、シリコンバレーで最も活発なベンチャーキャピタルの日本法人である、Plug and Play Japanにてマーケティング/PRを担当し、自ら新たな働き方を実践しています。
今回は藤本さんに、多くの日本企業が取り組んでいる「働き方改革」と自身のパーソナリティについて伺いました。
※このインタビューは、「NewsPicksアカデミアゼミ」の佐々木紀彦ゼミ「実践・稼げるコンテンツの創り方」にてゼミ生が課題として実施したものです。
藤本あゆみ/at Will Work代表
大学卒業後、2002年キャリアデザインセンターに入社。求人広告媒体の営業職を経て、入社3年目に、当時唯一の女性マネージャーに最年少で就任。2007年4月グーグルに転職。代理店渉外職を経て、営業マネージャーに就任。女性活躍プロジェクト「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。株式会社お金のデザインでのPRマネージャーとしての仕事を経て、2018年3月より現職。

まずはスモールスタート

──まずはじめに率直な意見をお聞かせください。働き方改革がうまくいっている企業、いっていない企業、違いは何でしょうか?
藤本 そうですね。明らかに分かりやすいポイントがひとつあります。「何を解決すべきかちゃんと理解している企業」はうまくいっていると思いますね。
つまり、会社の中で今起きている問題をちゃんと把握されていて、それを解決する方法が「テレワークとか、残業規制等の働き方」の部分。
やり方そのもの自体はツールでしかないので、その適切なツールを選べているかどうか? 他社がやっているから、うちもやろう!他社がやっているから、うちもテレワーク導入しよう!では、問題把握できていないので結局「あれ?なんでこんなことやってんだっけ?」といって、うまくいかないパターンが多いですよね。
──なるほど…。テレワーク導入企業、特に中小企業において、昔ながらの働き方…たとえば、テレワーク活用中の子育てママと、なんで会社来てない人間と同じ給料体系なんだ!と思うおっさん世代がいてうまくいってない企業が多いと思うのですが、いかがでしょうか?
まず、その会社が問題把握できていないですよね。今、その会社の経営者が解決したい問題と、その会社の現場で起きている問題が違うのではないでしょうか?
経営者と中間管理職・人事部と現場が同じ課題と認識せず始めてしまうと、すごくトンチンカンなことになって、みんながオタオタしています…。
そこでいつもおススメしているのは「スモールスタート」です。ある部署だけでとりあえずやってみる。リモートワークをするなら全員でする。
そうすると、意外とうまくいったりします。やっぱりみんな自分のことを分かって欲しいし、それぞれの都合があるので、みんなでやってみると同じ目線で議論が進みますね。

言ったことに責任を持つ

──そんな藤本さんの今までのキャリア、全てフィットしているように見えるのですが、どうやって選択しているのでしょうか?
それで言うと…、私全然出来ていないですよ!実は自分で意思表示して、ここで働きたい!こういう風に働きたい!って条件面も含めて決めたのは、今の会社が初めてです。
新卒で入ったときは人材紹介業やりたいって言ったのに広告営業に飛ばされ…、Googleの時は裏方業に徹しようと思っていたのに、フロント営業に戻り…、という感じで流れに乗ってたら「なるほど、私はこんなことが得意だったのか。」とか「こういうことが好きだったのか!」と、都度新しい自分を発見していくような感じでした。
なので、ようやくこの年になって「私こうやって働きたいかも!」と思えています。
ただ、いつもどんなときでも自分がやりたいと主張したことに対して、「言ったことに責任を持つ」ということは意識していました。
自由であることは同時に責任を持つことなので、「言うんだったら、やる!」という決めています。

働き方改革は経営改革

──藤本さんのお話しを聞いているといつも楽しそうに見えるのですが、ストレスはあるんでしょうか?
ありますよー!いつもストレスです!!(笑)緊張感あるとストレスも溜まりますけど、ストレスを感じない仕事は楽しくないだろうなって思います。
ただ、ストレスを楽しいと感じれるかどうか。ホントに辛いだけだと辞めた方が良いですし、今は良いストレスなので、上手くいかないときは「次はこうしてみよう!」とか、ポジティブな考えになれるので今の環境が好きですね。
一番のストレスは「あなたこれだけやってくれれば良いから」と押し付けられたとき。すぐ辞めますね(笑)
──働き方改革の現在地(値)はどうなんでしょうか?
すでに7,8割の企業が働き方改革に取り組んでいるという調査データがあります。一方、本当に働き方改革で生産性があがるのか?という疑念はあります。
むしろ管理コストが増えているのではないかと思います。たとえば、「タバコを吸いに行く人はほっとく」のに、「テレワークで画面から離れた人は管理する」みたいな。おかしくないですか(笑)
ホントにまじめに取り組んでいる企業はどんどん苦しくなって、やめるんじゃないかなと思っています。最初に言った、何のために?という部分と、明確なKPIを設定しないと難しいですよね。
結局は働き方改革と言っていますが経営改革なので、働き方改革がうまくいっている企業は経営がうまくいっているということだと思います。

選択肢のある働き方

──こうなったら良いなという未来図はありますか?
それでいうと、at Will Workの存在目的はひとつしかなくて「選択肢のある働き方を創る」ということなんです。
その選択肢を働き方改革に当てはめると会社も働き方を選ぶ、たとえば「働き方改革やめました」とか「終身雇用はじめました」とか決めれば良いし、働く方もそれを見て選択したり交渉する。
というバリエーションが増えれば良いなと思います。
──藤本さん自身の選択肢、引出しが多いように思うのですが、日々の情報収集はどうされているのでしょうか?
ひとつはNewsPicks(笑)言わされてないですよ。ホントの話しプロピッカーになってから確実にNewsを見る量は増えました。
何でもかんでもPickすれば良いわけではなくて、自分の専門性のある分野を意識しています。ただ、領域を広げるためにも敢えて関係ないもの見に行ったりということはあります。
うーんでも、基本好きなものしか見に行かない。ホントに計画性ないんで(笑)その方がシナプス効果があるような気がしますね。赴くままにって感じですかね…。

自分はどうしたいのか?

──藤本さんみたいに問題点にフォーカスして改善を実行する力、どのようにして養われたのでしょうか?
それでいうとやはり、小中高の時代でしょうか。私、小中高ずっと「桐朋学園」に通っていました。桐朋の日々がなかったら今の私はできていないと思いますね。
小学校から自由なんですが衝撃的なのは中高で、「校則が無い」んです。自主規制しかなくて、自分たちで考えろという文化。なので、先ほど言った「言ったことに責任を持つ」というのはこの時代に叩き込まれたことなんです。
たとえば、ルーズソックスが流行ったときには先生がみんなにどうしたい?と聞いてくるんです。「この学校の歴史にルーズソックスは相応しいのか?」をみんなで議論させるんです。
──どっちになったんでしょうか?
どっちでも良いとなりました(笑) 私は履いたり履かなかったり。
あと、違うなと思ったことは、「やたら登山をさせる」。修学旅行も京都で、「どうしたら京都を学ぶことが出来るか?」というお題だけ渡されて、スタート・ゴールが決まっているだけ。あとは自由。
演劇もそうですね。私は普通科でしたが同じ学園内に演劇科があったので、演劇をよく観る機会があったと思います。今でもミュージカルはよく観に行きます。
まったく仕事には関係ないんですけど、演出の仕方とかストーリーの組み立てかたとか、勉強になるんです。今思えば、桐朋時代の経験が習慣付いているんだろうなと思います。

企んで外す

──他に今につながる経験はありますか?
ありますね。文化祭委員長やってました。中高ずっと。今のPlug and Playがしっくりくるのはそこなんだと思うんです。ずっと文化祭なんで(笑)
大きなイベントがあって、間に小さなイベントがあって、色んな人巻き込んで、ハプニングがあって…。なんか覚えがあるぞ!みたいな。
──そういう過去の経験が今につながっているんですね。
そうでしょうね。経験があったほうが、全く無いよりは良いですよね。ただ、大事にしているのは「バイアスがあるっていうことを忘れないようにする」ってこと。
こうしたら楽だろうなとか、こうしたら上手くいくだろうな。というのは分かるので、敢えて違う人の意見をもらったり、わざと違うことをしてみたり、毎回ちょっとずつ「企んで外す」んです。
事故の起こり方は分かっているので、失敗しないように変化を楽しむ。だからat Will Workのカンファレンスは5年と決めて、毎回登壇者を変えたんです。考えるのはつらいんですけど(笑)
──そんな過去の自分に戻ってアドバイスするとしたら何かありますか?
大学時代の自分に言うとしたら「もっと海外に行け!」って言いたいかも。
高校2年生の時初めての海外、アメリカに行ったんです。父の昔の同僚が今ニューヨークに住んでるから遊びにおいでよー。行きまーす!みたいなノリで。
よくよく聞くと、親はお金を出してくれず、借金して行きました(笑)
そんなノリが大学時代には無かったかな。でも、過去に戻ってやりなおしたいってことは思わないですよ。

タフにしなやかに

──最後の質問になりますが、過去のインタビューで「ロールモデルはいない」と仰られていました。影響を受けた方はいらっしゃいますか?
会いたいのは占い師の「しいたけさん」。占いで物事の判断はしないのですが(笑)
まじめな話では、日本航空で女性初のパイロットになられた「藤明里さん」ですね。桐朋出身の方で、お話ししてみたいなと思います。
ロールモデルはいないんですが、新卒入社のキャリアデザインセンターに当時アメリカ支局があって、入社前にそこを家族旅行の途中に訪ねて行ったんです。
そこで働いていた方に言われたことがすごく今でも自分の中で糧になっています。
「タフにしなやかに生きなさい」
タフに生きることはすごく大事だけど、真正面に受け止めていると崩れてしまう。かわす日もあれば、受け止める日もある。
それを意識して生きなさいと言われたんです。
当時はよくわかっていませんでしたが、今はなるほどなあと身に染みて思う事があるので、それを思い出すようにしています。
(執筆:澤本俊平)