【Money】トップのマネーヒストリー

2019/1/4
スタートアップを成功させ、創業から5年で上場へと導いたマネーフォワード・辻庸介CEO。
これまでどのようにお金と向き合い、
また、どのように使って自らの血肉としてきたのか──

「The UPDATE」の1コーナー、「Money UPDATE」の主題にちなみ、マネーヒストリーを明かしてもらった。
聞き手は番組MCの奥井奈々が担当。

中学時代:長い通学時間を読書に

マネーフォワード 辻庸介CEO
──10代、20代、30代それぞれで、主にどのようなものにお金をかけていましたか?
 10代というと、ほぼ中高生の頃ですからね。お小遣いの大半は、本やマンガ、そしてゲームセンターに費やしていました。
──中学生らしい内訳ですね(笑)。
本は主にどんな作品を読んでいましたか?
 僕は小学生の時から電車通学で、中学時代は片道1時間半もかけて学校に通っていたんです。
当時はスマホもありませんから、電車の中でやることといえば読書くらいしかなく、書店で気になったものを片っ端から読み漁っている感じでした。
なかでも山岡荘八『徳川家康』や池波正太郎『真田太平記』などの歴史物が好きでしたが、
ほかにも村上春樹や星新一、あるいは三島由紀夫や太宰治といった作品もよく読みましたね。
マンガも何でも読みましたけど、当時流行っていたのは、『ツルモク独身寮』とか『行け!稲中卓球部』とか、『タッチ』をはじめとする一連のあだち充作品とか……。
あと、やはり歴史が好きなので、『蒼天航路』あたりにハマっていましたね。
──ゲームにハマっていたというのは、ちょっと意外です。
 なにしろ通学時間が長かったので、乗り換えの梅田駅で降りて、少し遊んでから帰ることが多かったんですよ。
あと、高校時代に親から「X68000」というパソコンを買ってもらったので、寝る間を惜しんで歴史ゲームに興じていました。
徹夜すると怒られるので、いったん寝たふりをしてこっそり起き出し、明け方までプレイすることもしばしばでした(笑)。
──なるほど。本もゲームも、知識を養うことに役立っているように思います。
 僕は勉強が嫌いな子供だったんですけど、確かに国語だけは何もしなくても人よりできました。やはり読書のおかげなんでしょうね。

会社員時代:退職届を常に所持

──続いて、20代はどうでしょう。
 本、飲み会、テニスというところでしょうか。ただし、大学時代はテニスサークルのキャプテンだったので、テニスと飲み会はセットであることも多かったです。
本は相変わらず乱読でしたけど、社会に出てからは小説よりもビジネス書や実用書を多く読むようになりましたね。
なかでも多かったのが不動産投資などお金に関するもの。これは今の仕事にも通じていますね。
──お金に強い関心を持っていたのは、
何かきっかけがあるんですか?
 会社員生活を送る中で、もし納得のいかない理不尽なことがあったとした場合、給料のために我慢したくないという気持ちがあったんです。
幸い、僕が新卒でお世話になったソニーはとてもいい環境で、大きな不満を持つことはありませんでしたが、いざという時は自分の意志で辞められるようにしておきたかったんですよね。
退職届も常に机の中に忍ばせていましたし。
──すごい! 会社にただ雇われている状態に
抵抗があったんですね。
 そう。
会社と社員は対等の立場であるべきだと、何もできない20代の頃から思っていました(笑)
今考えると、相当生意気だったと思います。
──そこで投資でお金を作ろうという発想が、
なんともユニークですよね(笑)
 大阪人だからでしょうか。お店で値切り交渉をするのも、関東の人はあまりよく思わないかもしれませんが、僕らからするとコミュニケーションの一種なんですよね。交渉自体を楽しんでいるというか。
ある先輩が上場企業の社長の出身地を数えたら、圧倒的に関西出身者が多かったそうなんです。お金に強い関心を持つ地域性と、無関係ではない気がしています。
物につけられた値って、絶対的なものではないと思うんですよ。重要なのは100円で売られている物に、自分が100円以上の価値を感じられるかどうか。
売買とは本来、同等の価値を持つお金と商品との物々交換ですから、割高であってはいけないはず。そして、お金にその価値を与えているのは信用ですよね。
──なるほど。そして信用は、人間にも付きまとうものですよね。
 そうですね。今はとくに、SNSのフォロワー数や友達の数で、その人がどのくらいの影響力を持っているのか、信用に足る人物なのかが、可視化されるようになりました。
その意味ではコミュニケーションが取りやすくなっていると言えますが、信用は一瞬で失うものですからね。
お金のように、「また稼げばいい」というものではないので気をつけなければなりません。

お金を、人生を前へ導くこと

──20代では飲み会にもだいぶお金を使われたようですが。
 飲み会には今も昔も、できるかぎり参加するようにしているんです。
これは人脈や知見を得るのに理想的な手段で、場合によっては10年も20年も先を行く先輩の経験をラーニングできるわけですから、お得ですよ。最近は20代の頃に飲み会で出会った人たちと、今になって仕事でご一緒できる機会も増えてきました。
もっとも、何かを吸収しようという下心だけで参加するのではなく、単純にお酒やおしゃべりが好きだから楽しいというのが第一です。
もちろんつまらない酒席もあるのでしょうが、それも投資の一種。何割かの確率で素晴らしい出会いがあるなら、社会人としても経営者としても十分だと思います。
──では、スタートアップも経験された、30代のお金の使い道は。
 本、飲み会、勉強、ですね。
20代と一番変わったのは「勉強」で、 MBAを取るためにアメリカへ行き、三十路を越えてから塾通いを始めました。
これはマネックス証券時代に自分の実力不足と引き出しの少なさを痛感したのがきっかけで、グローバルで通用する人間になるには、ビジネスのことを勉強し直さなければと思ったんです。
──そこでアメリカへ、というのが
とてもストイックです。
 グローバル市場で活躍する人材が、どんな人間でどんなことを考えているのか、というのを知りたかったんです。
最初は先生の言っていることがまったくわからず、「そもそもこれ、英語なの?」という状態からのスタートでしたが、必死に頑張りました。
知識の面でもそうですが、多少なりともアメリカを知ったことで、あらためて日本の良いところをたくさん自覚できたのはよかったですね。こんなに安全で食事の美味い国はないですよ(笑)。
──では最後に、現在の辻さんにとって
「お金」とは何でしょう?
 僕にとってお金は「ツール」に過ぎません。人生を豊かにしたり、会社を成長させたりするためのツールです。
これをうまく使いこなすには知識も経験も必要なわけですが、少なくともお金に人生を支配されたくないと考えています。
そこで僕らは創業時から、ミッション、ビジョン、バリューという社是を定めています。ミッションは、「お金を前へ。人生をもっと前へ」。
ビジョンは、「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる」そしてバリューは、ユーザー視点の「User Focus」、テクノロジーで世界を変える「Technology Driven」、そしてオープンで公正であることを示す「Fairness」の3つです。
これらを念頭に、お金というツールを大切に使って皆さんの生活を豊かなものにできれば理想的ですね。
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