(ブルームバーグ): ソフトバンクグループは携帯子会社ソフトバンクの新規株式公開(IPO)で、国内リテール(個人)向け販売により2兆円規模の資金調達を目指していることが分かった。個人からの調達額では過去最高となる。長引く低金利政策で預金からの収入に期待できない個人投資家に照準を合わせる。

複数の関係者によれば、主幹事証券を取りまとめるジョイント・グローバル・コーディネーターの野村ホールディングスが最も多くを引き受け販売する見込み。内外の機関投資家にも販売する。ソフトバンクは来週にも、公募売り出しの詳細などについて発表する。

ソフトバンクGの孫正義会長兼社長は、人件費といったコストを大幅削減することで国内通信事業の増益を計画しているほか、株主には高配当を支払う考えだ。日本銀行の統計によると、6月末時点の個人金融資産のうち現預金は971兆円で、株式など有価証券での保有はその3分の1以下となっている。

DZHフィナンシャルリサーチの田中一実IPOアナリストは、「ソフトバンクは話題性があり高配当も期待できるため、個人投資家に関心が持たれている」と指摘。販売規模は大きいが日本の個人金融資産の大きさからも「株取引をしたことのない個人に売るのも不可能ではない」と述べた。

ソフトバンクGと野村の広報担当者はIPOの詳細についてはコメントできないとしている。

孫社長は高配当に意欲

ブルームバーグのデータによれば、過去のIPOでは、2015年に日本郵政グループ、1998年にNTTドコモがそれぞれ約1兆円を個人向けに販売している。 

関係者によれば、ソフトバンクのIPOは売出し規模が2.5兆円から3兆円で、時価総額は8兆円規模が見込まれる。12月19日に東京証券取引所に上場する見通し。株式相場の動向や外部環境の変化で調達額や上場時期が変動する可能性もある。

野村のほかゴールドマン・サックスやドイツ銀行、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループもジョイント・グローバル・コーディネーターに選定されている。

孫社長は5日の決算会見で、国内通信事業の社員数を今後2-3年で4割削減し、増益につなげる考えを明らかにした。対象社員は新規事業に再配置する方針だ。

株価動向や料金値下げによる収益悪化懸念が、市場価値や上場時期に与える影響については「高配当で増益ということであれば、どのようにIPOの価格に影響を与えるのか、多くの皆さまがこれから消化し判断するものではないか」と述べた。

--取材協力:古川有希、院去信太郎.

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