【新潮流】世界の映画監督が頼る「日本発ベンチャー」のニッチ戦略

2018/5/23
2018年5月19日、是枝裕和監督の「万引き家族」がカンヌ国際映画祭の最高賞、パルムドールを受賞した。
日本の映画が、カンヌで最高賞を受賞するのは1997年以来実に21年ぶりで、業界内外で、久方ぶりの受賞を喜ぶ声は大きい。
ただ、日本映画は長い低迷の時代を本当に抜けたと言えるのか。実は、映画業界には製作費を取り巻く構造問題が横たわっており、1つの作品の受賞をもって「映画業界復活」と宣言できないだけの事情がある。
もともと映画界は、1950年代の全盛期に観客動員数のピークを迎えている。しかし、その後はテレビの普及などにより低迷。現在までの間に、数多くの映画会社が倒産した。
その結果、映画会社が自社の資金だけで製作費をまかなう体力がなくなり、複数の企業の出資を受けて映画を製作する製作委員会方式が主流になっていった。この方式は、映画がヒットしなかった場合のリスクを分散できるというメリットがあった。
ただし、その一方で、「そもそもヒットしなさそうな映画にはお金がつかない」という副作用もある。いつしか映画界には「興行主義」がはびこり、現在は、著名な映画監督でさえ、資金調達に困るっているという。
そんな中、あるベンチャー企業が、映画界のお金の流れを変えるために動き出した。50年もの間、低迷を続ける映画業界は長いトンネルから抜けられるのか。
第2回は、芸術にフォーカスしたクラウドファンディングサービスを運営するMotionGallery (モーションギャラリー)の大高健志社長に、名監督に頼られるサービスの戦略について聞いた。
大高健志(おおたか・たけし)/MotionGallery 創業者&代表取締役CEO。早稲田大学政治経済学部卒業後、外資系コンサルティングファームで戦略コンサルタントとして、主に通信・メディア業界の事業戦略立案などに携わる。 その後、映画のプロデューサーを志し、東京芸術大学大学院に進学。2011年、クラウドファンディングプラットフォーム「MotionGallery」を立ち上げる。
手数料10%のわけ
──国内には、「MotionGallery(モーションギャラリー )」 以外にもいくつかのクラウドファンディングの会社がありますが、映画などのアートにフォーカスしているのは珍しいですね。
かなり珍しいですね。他のクラウドファンディングですと、アートよりも何らかの製品、プロダクトが多い印象があります。私たちもプロダクトや飲食を扱っていますが、プロジェクトの数で言えば少ない。
映画が4割で、その他でもクリエイティブ領域の利用が圧倒的に多いです。