漫才ブーム勃発、「大阪の笑い」が箱根の山を越える

2018/7/30

「ミスター吉本」の下で

新人時代の僕を鍛えてくれた上司が、のちに「ミスター吉本」の異名をとるほどのキレ者、木村政雄さんでした。僕は配属になった京都花月で、木村さんの下につくことになったのです。
「横山やすし・西川きよしをスターにした敏腕マネージャー」
「あのやすしが言うことを聞くのは木村さんだけ」
など木村さんの噂は研修中から耳にしていたので、どんな人かと内心ビクビクしていました。
初めて会った日の木村さんは、真ん中にピシッと折り目の入った白いスラックスに真っ赤なセーター、金色のブレスレットにカルティエのセカンドバッグという、いかにも「ザ・業界人」のいでたち。
そして木村さんは初対面の僕にこう言いました。
「きみは新入社員の3人のなかでも、いちばん出来が悪いらしいな。ほかの人に勝つためには、人の3倍働きなさい」
「はい!」
僕はおふくろからは唯一、「社会に出たら、みんなから可愛がられなあかんで」と言われていたので、返事だけはよかった。

口答えは許されない

そしてこの瞬間、木村さんと僕の関係は決定しました。つまり木村さんは僕にとって絶対的な存在。口答えは許されない。
その後、木村さんにはありとあらゆるむちゃな指示をされましたが、「はい!」以外の返事をした記憶はありません。