アップルのサプライヤーリストにより、フィンランドの紙・包装材メーカー、ストゥーラ・エンソがアップルの重要なサプライヤーであることが明らかになった。アップルは、iPhoneの包装に使用するプラスチック量を削減している。

元首相「携帯電話と製紙を破壊」

フィンランドの元首相はかつて、アップルを非難したことがある。同国の二大産業である携帯電話と製紙を破壊したという理由でだ。
だが、3月上旬に発表された文書によれば、欧州最大級の紙・包装材メーカーであるストゥーラ・エンソは、いまやアップルの重要なサプライヤーになっているようだ。
両社の結びつきは、以前ならありそうもないことだった。2014年には、当時のフィンランド首相アレクサンデル・ストゥブが、フィンランドの製紙産業を殺すとして「iPad」を非難した。
同国の製紙産業は、ストゥーラとUPMキュンメネが支配している。「我が国の一流企業2社が苦境に陥った」とストゥブは語り、さらにもうひとつのフィンランドの有力企業ノキアの崩壊にも言及した。
ノキアはもはや、携帯電話メーカーとしてはアップルの敵ではなくなったが、一方のストゥーラはそれほどひどい結果には陥っていない。ストゥブ元首相がその運命を公の場で嘆いて以来、ストゥーラの株価は現在までに150%も上昇しているのだ。
ストゥーラ・エンソは、1998年にスウェーデンのストゥーラとフィンランドのエンソが合併して生まれた。同社は、紙の新聞からデジタル版への移行が進んだことで製紙事業が凋落する事態の脱却に多額の資金を投じ、木材や植物繊維を原料とする革新的な包装材に力を注いできた。
一般消費者向けの厚紙及び包装ソリューションは、いまや同社の売上の3分の1以上を占めている。この割合は、20年前には5分の1にすぎなかった。

プラスチック製包装材からの脱却

一方のアップルでも、変化が進んでいた。プラスチック製包装材からの脱却だ。
最近発売された「iPhone 8」では電源アダプターの包装材として、ポリプロピレンのかわりに繊維ベースの代替品が使われた。「iPhone 7」の包装に使われたプラスチック類は、前バージョンに比べて84%減少した。
ストゥーラとアップルの広報担当者からは、両社の契約の詳細に関するコメントは得られなかった。
アップルとの契約を勝ちとったストゥーラは、1四半期に約7500万台のiPhoneを購入する顧客を手に入れたことになる。そのiPhoneのひとつひとつに、包装材が必要だ。
ストゥーラに取ってかわられたサプライヤーがどこかは、明らかになっていない。また、ストゥーラが以前にもアップルと提携したことがあるのかどうかも明らかになっていない。アップルは毎年、主要サプライヤーのリストを公開しているが、深セン市裕同包装科技などの企業はリストに残っている。
いずれにせよ、ストゥーラとアップルの現在の契約は、かなり大規模なものである可能性が高い。ストゥーラがアップルのサプライヤーリストに登場したのは、2012年に同リストが公開され始めて以来、初めてのことだ。
アップルに製品を提供しているストゥーラの工場3つは、中国に存在する。中国は、米テック企業のほとんどが製品を組み立てる国だ。
ストゥーラのカール・ヘンリク・サンドストローム最高経営責任者(CEO)は2月にブルームバーグに対して、ストゥーラの一般消費者向け厚紙及び包装材ソリューション部門の売上は、中国の影響で「大幅に」伸びるだろうと語っている。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Giles Turner記者、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:Takosan/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.