【新】段ボール会社からビームスを生んだ設楽洋の「創造ライフ」

2018/3/24

ビームスは段ボール会社だった

【設楽 洋】玩具は、玉ねぎのピラミッド、段ボールの破片
僕が物心ついたころ、父が段ボールのパッケージをつくる工場を始めました。それが自宅と続いていたので、ドアを開けると工場です。
幼いながらも工場にすごく興味があったけれど、絶対そこには入るなと言われていました。
でも僕はたまにこっそり入っていました。
子どものおもちゃもあまり売っていなかったし、買ってもらえない時代だったから、段ボールの破片を持ってきて、輪ゴムとか糸巻きとか割り箸などを使って、いろいろな工作をするのです。

お祭りの興奮が原体験

【設楽 洋】お祭り大好き。商売でハッピーを届けたい
大学を卒業して入った電通でもイベントを手がけるようになりますし、いまだにお祭りが大好きで、今の商売でもハッピーを届けるということを重視しています。
それは幼い日のお祭りの興奮が原体験にあるからかもしれません。

嫉妬にまみれた暗い浪人生活

【設楽 洋】予備校模試、滑り止め合格率「0%」からの慶應受験
バンドの仲間たちは、5人のうち僕と遠藤だけを残し、3人とも現役で合格していました。2人は東大で、1人は早稲田。その3人は僕らをおいてかわいい女の子をメンバーに迎え、別のバンドをつくった。
こちらは暗い浪人生活を送っているのに、彼らは華やかなスポットライトを浴びて、ヤマハのポプコンに出て関東甲信越大会まで行き、レコードまで出したのです。
ものすごく嫉妬にまみれた暗い生活を送りました。

電通に就職しよう

【設楽 洋】欲しいものがどこにも売ってないなら自分で売ろう
コピーライターとかプランナーというのは、別に美大を出ていなければいけないというものでもありません。
それに僕は広告研究会に所属していたし、バンドメンバー5人のうち現役で大学に入った2人が、1年早く電通に就職していました。
それで自分も電通に行くと決めたのですが、現実はそう甘くありませんでした。

コネはあるのかね?

【設楽 洋】電通「120%無理」。就職試験に備えて猛勉強
大学の就職部に行って、「電通に行きたい」と言いました。
「君はコネはあるのかね?」
「いえ、ありません」
「君、この成績だよね。電通は120パーセント無理だからやめなさい」
予備校の模試では大学合格率0パーセントと言われ、就職では「120パーセント無理」と言われてしまった。

ビームス1号店店長の重松理さん

【設楽 洋】飲み屋で知り合った若者のアイデアからビームス誕生
ビームスは、父が新宿の飲み屋で知り合った方が持っていた、「アメリカのライフスタイル全般を扱う店」というアイデアから生まれたものです。
その人は僕より少し上くらいでほぼ同年代。その方が連れてきたのが、のちにユナイテッドアローズを立ち上げる重松理さんです。
当時、重松さんは27歳くらいで、ビームス1号店の店長になりました。

ファッションの「宿命」を逃れる

【設楽 洋】なぜビームスは店ごとにコンセプトを変えるのか?
ビームスは事業計画というよりも、流行や時代の流れ、あるいは、われわれ自身の年齢や心理の変化に合わせて店を出してきました。
出店のたびに店のコンセプトを変えてきましたが、そのおかげでビームスはファッションの世界につきものの「宿命」から逃れることができているとも言えます。

あえて一世を風靡しない

【設楽 洋】あえて一世を風靡しない、ビームスの戦略
1つのテイストだけが流行りすぎないように、仮に大ヒットした商品があったとしても、ヒットしすぎる前に売るのを止めて、あえて一世を風靡しないようにしています。

反対社員を説得する話し方

【設楽 洋】反対する社員を説得する話し方
「この良さがわかる人だけ、わかってくれればいい。わからない人は来なくていいよ」という店としてずっとやってきた。
しかし会社はある程度成長し続けなければ生き残っていけない。
そこでみんなを説得するとき、こんな言い方をしました。

幹部たちの突然の辞表提出

【設楽 洋】大ピンチ。重松理さんと幹部8人が突然、辞表提出
役員会が終わりに近づいたとき、ビームスにとってなくてはならない人だった重松理さんと幹部8名全員の辞表が出されました。
一瞬、何が起こったのかわかりませんでした。

一生の大親友を失うかもしれない

【設楽 洋】辞めた幹部たちの穴を埋めるために若手を育成
僕が電通でJALの担当になったら、そのJALで宣伝の担当になり、電通にやってきたのがなんと遠藤でした。
その後、遠藤はJALを辞めてビームス に入社するのですが、本当は遠藤と一緒に仕事をするにあたり、非常に迷いました。
友達としては気の合う相手でも、一緒にビジネスをすることになれば意見がぶつかることもあるでしょう。もしかしたら一生の大親友を失うことになるかもしれない。

プラス思考の人を採る

【設楽 洋】あなたは強運ですか? プラス思考の人と仕事がしたい
ビームスの採用面接で、「あなたは強運ですか?」と聞いたこともあります。
同じ成績であれば運がいい人のほうを採りたい。もし本当に運がいいのであれば、その人がビームスに入ってくれることで、ぜひともその運を分けてもらいたい。
しかしそれ以上に重要なのは、「自分は運がいい」という自覚があるかどうか。その人はプラス思考だからです。

これからの小売業のあり方

【最終話・設楽 洋】インフルエンサーのプロダクションになる
2005年に、ビームスはファッション通販サイトのZOZOTOWNに初出店しました。
それまで僕ははっきり言って、インターネットで服が売れるとは思っていませんでした。
ところが出店してみるとすごくよく売れる。ビームスにも直営のオンラインショップがありますが、こちらの売り上げもやはり右肩上がりです。
僕は「ネット対リアル」という図式では考えていません。
リアル店舗を持つ企業はどこもオムニチャネルに注力していますが、ビームスはその中心に「人」を据えています。
どういうことかというと──。
連載「イノベーターズ・ライフ」、本日、第1話を公開します。
(予告編構成:上田真緒、本編聞き手・構成:長山清子、撮影:遠藤素子、バナーデザイン:今村 徹)