オリックス、ロッテの“上司の責任”。日本ハムの予算的限界

2017/12/28
5指標から読み解く2017年パ・リーグ解析&2018年優勝へのポイント。ソフトバンクを中心に取材するスポーツライターの田尻耕太郎、12球団をバランスよく取材するスポーツジャーナリストの氏原英明、西武を中心に取材するNewsPicks編集部の中島大輔によるパ・リーグ後編をお届けする。前編はこちら
オリックスの悪循環
田尻 ソフトバンクの対抗を挙げるなら、戦力的に爆発力があるオリックスです。ただ、いかんせんベンチのマネジメントがよくない。
中島 福良(淳一)監督問題ですね。ここ数年、毎年優勝候補に挙げられながら、期待を裏切り続けています。
氏原 2017年8月から1番をT–岡田にしたじゃないですか。その意図として、「すごくいい1番バッターを抜擢しました」と見えたらいいんですけど、苦し紛れにしか見えないんです。“T-岡田はクリーンアップで結果が出せないから7番に下げた。でも、それなら1番に持ってくればいいんじゃん”という起用にしか思えないし、そういう意図のなさに福良監督のやり方が表れていると思います。
チームの編成も悪くて、ホームランバッターが並んでいます。オリックスに1番打者がいないのは事実です。キューバからサントスを獲るべきはロッテではなく、オリックスでした。すでに順位が決まったシーズン終盤、駿太や宗(佑磨)、武田健吾という若手を、打てなくてもいいから1番で起用しないといけなかった。でも、それをやらずにT-岡田を1番にしました。「福良監督はT-岡田が1番だと考えているんですね」とわかったので、それを2018年にやらなかったら、即解任したほうがいいです。
中島 宮内(義彦)オーナーほどの経営者が、なぜこんなに成績を残せていない福良監督を続投させるのか、まったく理解できません。
氏原 福良監督は厳しさを履き違えているじゃないですか。5月26日、3回途中4失点した山崎福也を試合中に千葉から大阪まで帰らせましたけど、“見るからに気が弱そうな選手にそんなことをして、結果が出るわけがないでしょ?”という話じゃないですか。
松葉(貴大)は先発ローテーションを飛ばしてでも西武戦にばかり先発させるけど、ドラフト1位の選手なんだから、それなりのピッチャーになってもらわないといけないはずです。それなのに偏った起用をしていて、チームとしてどうやって戦いたいかが見えません。
田尻 2018年は松葉がポイントだと思います。2017年は3勝12敗だったけど、クオリティスタートはリーグ9位タイ。チームでは金子千尋の次です。その割に信用されていないですよね。4月5日にメットライフドームで行われた西武戦では8回無失点、91球で交代させられました。いい投球なのに球数100球未満で交代させられて、信用されていないんだなと。福良監督はピッチャーの交代がえらく早いんですよ。
中島 それで佐藤達也、比嘉(幹貴)など、中継ぎがどんどん疲弊していく。
田尻 何連投までとか、この点差だったら投げさせないとか、1年間通して中継ぎにどれくらい投げさせていくという管理がまったくなされていないように感じます。
中島 2017年には新人の黒木(優太)が前半戦から連日のように投げていて、“佐藤達也の二の舞いにさせるなよ”と思いながら見ていました。とにかくこのチームは、ルーキーイヤーから投げさせすぎます。 2018年も福良監督が率いる以上、他に誰か言える人がいないと厳しいです。
田尻 ピッチングコーチで入る高山(郁夫)さんは、結構無理使いするタイプです。2014年にオリックスのコーチだったときにはチーム防御率2.89と頑張った一方、比嘉はあのときに潰れています。ソフトバンクでは2013年までピッチングコーチをしていましたけど、どちらかというと吉井(理人)さんがマネジメントして現在の投手陣があります。
氏原 でも、戦力バランス的にはオリックスが一番充実しているんですよね。外国人選手がいいというのもあるんですけど。
田尻 ピッチャーにも、若くていい選手がいっぱいいますよね。2017年シーズンはキャッチャーで主に若月(健矢)を起用してたけど、経験のある伊藤光で行けば3位に入れたんじゃないかな。でも、チームとして次の時代に行こうと進んでいるので、2018年に若月を使わなかったら意味がない。
氏原 オリックスは選手の成長を待ち切れないから、高卒が育っていないんです。待ち切れないから、社会人をとっている。ドラフト2位の使い方は非常にうまいと思います。2017年の鈴木康平、2016年の黒木も、評価としては1位の選手。シーズンの順位が低いから、逆ウェーバー方式のドラフト2位ではいい選手をとれているんです。だから戦力としてはそろっている状態で、あとは左ピッチャーが出てくるくらいです。
ただし、チームにリーダーがいません。ここが一番の問題です。だから、落ち込んだときに持ちこたえられないんですよ。
中島 プロ野球は、優勝するとほぼ監督の手柄のように評価される世界です。そうしたところでここまで監督がリーダーとして機能していないと、僕はまったく期待していません。なぜなら、2018年もこれまでと同じ野球をやるじゃないですか。
田尻 でもソフトバンクも一つにはなっていないわけで、勝ちたいんだったら選手が自覚を持って、頑張るしかない。勝ったことがない選手が多いから、勝ち方がわからないとは思うけど。
氏原 2017年のオリックスは4位でしたが、ロッテは五角形チャートが示すように厳しい状態で、日本ハムは途中で“ペナントのさじ”を投げました。
田尻 上とも下とも差がついた、ダントツの4位。
中島 ベンチワークの力が低いなかで優勝するには、どういうシナリオを描けばいいのか。選手が頑張れば、カバーできるのか。
氏原 でもリーダーがいないから、チームとして頑張り切れないんですよ。
田尻 最初から打順をある程度固定すれば選手は勝手に頑張ると思うけど、1番・T-岡田みたいなことをするから……。
氏原 1番・T-岡田を固定できれば、優勝しますよ。
中島 T-岡田の出塁率は3割7分4厘と高いんですよね。得点圏打率は2割5分と低いですが。データだけを見れば、1番に向いている。
氏原 下位打線で、打率2割2厘と打たない確率の高い若月が塁に出て、1番T-岡田に回ってきたら怖いですよ。1番T-岡田は悪くないと言えば、悪くない。本当は4番か5番に固定できるように育てるべきタイプなので、チームとしてどうなのかなとは思いますけど。
確かに1番にT-岡田がいて、2番・吉田正尚までされたら怖くて仕方ない。問題は、それをどれだけビジョンがあってやっているのか。
田尻 西武とは真逆で、対戦相手が緩い変化球をどんどん投げるけど、オリックスは盗塁が本当に少ない(2017年はリーグ最低の33、西武は最多の129)。だから、相手としては全然怖くない。京セラドームにラッキーゾーンを作って、打つだけの野球をすればいい。
中島 ヤフオクドームにラッキーゾーンを作らせた孫正義オーナーみたいに、宮内さんが鶴の一声でやらせる、と。いずれにせよ、オリックスは全体的にチーム改革をしてほしいです。
6年に1度勝てばいい?
中島 日本ハムは2016年の日本一から一転、残念な結果になりました。大谷翔平や近藤健介などケガも多かったですが。
田尻 2017年は絶対優勝しないと思っていました。そもそも3年に1回優勝すればいい、というチーム作りです。
氏原 6年に1回優勝すればいい、と思っているように感じられますね。
田尻 1リーグは6チームですからね。
氏原 ソフトバンクとは全然違いますよね。ソフトバンクは毎年優勝を狙っているから、給料が高くなるのも当然。日本ハムは毎年優勝したら、給料が上がって経営に支障が出かねない。
中島 球団経営も予算があってやっていて、破綻しては身もふたもないので仕方ないですけど……。
田尻 近藤がケガするとか、中田(翔)が全然打たないとか、気の毒は気の毒でした。ただ予算に限りがあって、あれだけ薄い選手層で戦っていると、主力にケガや不調が続出したときに本当に代わりがいない。ソフトバンクみたいに誰かがいればいいけど、日本ハムでは他の選手を作っておくことが予算上無理。横尾(俊建)を頑張って使ってみて、次のシーズンに頑張ってくれればいいや、みたいに見えてしまいます。左の太田(賢吾)もそうですよね。
中島 すべての輪がかみ合ったときには優勝できるけど、どれかが崩れるとガタガタといくというチームですよね。2018年は有原(航平)が頑張ることと、増井(浩俊)が抜けた抑えをどうするのか。
氏原 バッターはそこそこいます。問題はピッチャー。石川直也、ルーキーの西村天裕がクローザー候補だと思いますけど、彼らが活躍してやっと優勝争いに絡んでも、優勝はできないと思います。
田尻 中継ぎの田中豊樹は強い球を投げていましたけど、ケガするまで投げさせた。2017年シーズンを捨てているのに、なんでケガするまで投げさせるのかと思いました。それではチームの未来がないですよね。本当に選手が足りない。
氏原 4年後を見ているようにしか思えないんですよ。
田尻 仮に清宮(幸太郎)が60本打ったとしても、バレンティンが60本打っても最下位だったチームがあります。そう考えると、大谷(翔平)ってすごかった。2016年、二刀流で優勝させました。
日本ハムはダルビッシュ(有)が来て、大谷が来て、今回は清宮。数年に1回スーパースターが入ってくるのはすごいですよね。清宮が本格化するかもしれない数年後に期待ですね。
中島 球場移転して、経営面からチームの運営規模を拡大させられるようになってほしいですよね。現在の経営規模でソフトバンクに対抗するのは厳しいので、球場移転した後に戦えるように、いまは選手を育ててください、と。
監督交代がロッテの起爆剤に
中島 最後にロッテです。2017年は散々でしたけど、監督が伊東(勤)さんから井口(資仁)さんに代わってチームが変わると思いますか。
氏原 変わると思いますよ、特に1年目は。厳しい監督から緩くなって、ドンと行くことがよくあるじゃないですか。それって前の人の反動で、というのがあるので。井口さんは現役時代、ベンチの後ろで偉そうに座っているのではなく、一番前に座っていろんな選手と話していたので、うまくコミュニケーションできると思います。
2017年を振り返ると、ロッテは3位以内に入れる戦力でした。でも、2016年のDeNAと真逆だった。DeNAのラミレス監督は開幕からバーンとこけたとき、「大丈夫だ。問題ない」とポジティブに物事を捉えて、終盤になって上がって3位に滑り込みました。
一方、伊東監督は「先発が試合を作れなかった」「〇〇のエラーで負けた」と発言したり、懲罰的な2軍降格を繰り返したりするから、選手は前を向きようがなくて、ずっと下を向いている状態でした。順位をあきらめて、伊東監督が言わなくなった途端に中村奨吾や荻野貴司が活躍し始めました。ここもBクラスは監督の責任です。
中島 岡田(幸文)は干されて31試合しか使われませんでした。
氏原 中村奨吾は開幕のソフトバンク戦のエラーで、次の節から2軍に降格させられたようなものです。あんなにやる気をそぐようなことをされたら、一番やる気がなくなるタイプなのに。
田尻 井口さんはメジャーでプレー経験があり、秋のキャンプでも「向こうではあまり追い込むことをやらないよ」という形をとったみたいです。ヒルマン(元日本ハム)やバレンタイン(元ロッテ)みたいにコンディショニングを重視すると思いますね。そういう監督は、選手が力を発揮しやすい状況を作ってくれるのかな、と。
井口資仁は2005年、ホワイトソックスでワールドシリーズ優勝に輝いた
その代わり、反動で退任後にガーッとチーム力が落ちることが日本ハムにもロッテにも起こったから、そこを鳥越(裕介)コーチがどうケアするか。練習させる、いわゆる意識高い系の人なので、好循環が生まれることを期待したいです。
中島 鳥越さんはホークスでどういう貢献をしてきたんですか。
田尻 人として当たり前のことを、しっかり注意する。作法一つからすごく言う人でした。あいさつもそう。王様にさせない。そういう空気を作る人でした。うまいこと自虐を入れたり、笑えない笑いを取り入れたりしながらやる(笑)。鳥越さんの影響に関しては、2、3年後が楽しみです。ロッテは選手の力がもともとあると思うので、環境さえ整えてあげれば、やるんじゃないかなと。
氏原 先発ピッチャーは二木(康太)、石川(歩)、酒居(知史)、佐々木(千隼)、唐川(侑己)、大嶺(祐太)といます。右ピッチャーばかりですけど。
田尻 野手は荻野貴司。プロ入り8年目の2017年、やっとケガなくやれたので。
中島 ロッテのポイントは外国人選手。2017年の成績は悲惨でした。
田尻 費用対効果を1にしたのは、外国人が不振だったからです。
氏原 前に井口さんが、「外国人バッターは打順を変えないほうがいい。すぐに機嫌が悪くなるようなことをしてはダメ。外国人は適当にやっているように見えて、実は考えてやっているから彼らをまずは受け入れる。それで、気持ちよく野球をやらせておけばいい」という話をしていました。そういうこともわかっているんじゃないですか。
中島 このオフに導入される予定ですが、ロッテはパ・リーグで唯一トラックマン(高性能弾道測定器)をつけていませんでした。つけていれば、2Aや3Aなどマイナーリーグのデータもすべてシェアしてもらえるそうで、外国人の獲得にもつながる話です。それをパ・リーグではロッテだけ持っていなかったので、早くつけませんかと思っていました。
田尻 このあいだソフトバンクの後藤(芳光)社長と話す機会があって、「トラックマンをつけたときに『本物のデータ野球をお見せしますよ』と言いましたけど、2017年にエラー数がすごく少なかったのは、選手、コーチの頑張りもあるけど、打球方向のデータを全部とっていることもある」とスコアラーを評価していました。「テクノロジーを入れた成果だと思います」と。ロッテもトラックマンを早くつけるべきでしたね。
中島 ようやくトラックマンをつけるし、井口景気も期待できるし、ロッテはおもしろそうですね。
氏原 西武は伊東監督が辞めた後、渡辺久信さんが1年目の2008年に優勝していますからね。2018年のロッテには期待できると思います。
(デザイン:福田滉平、写真:AP/アフロ)
*明日はセ・リーグ編を掲載します。